かりん11巻 杏樹の巻です

1巻を通して杏樹主体の話。姉思いの妹と、妹思いの姉。なのに見事にすれ違ってしまい、読んでて重い気分になります。かりん11巻。

かりん 11 (角川コミックス ドラゴンJr. 67-12)

かりん 11 (角川コミックス ドラゴンJr. 67-12)

ドラゴンエイジ連載。看板漫画、といって差し支えないでしょうか。
人間の中でひっそりと暮らす吸血鬼一家、真紅家。吸血鬼は大人になると血を吸うようになり、昼間は外に出られなくなるはずなのに、長女のかりんは大人になった今も日の光の下で生活し、「吸血」するはずが何故か「増血」してしまう体質。
吸血鬼としての能力が劣っている彼女をフォローしてきた、まだ子供のため日の光の下で生活できる妹・杏樹。その彼女にも大人の吸血鬼になる兆しが現れます。
杏樹が大人になってしまったら1人昼の世界で生きていかなければならなくなるかりん。杏樹が大人になりつつあることに気付き不安に思いますが、大人になることはおめでたいことだと思い杏樹の成長を祝福しようと思います。
一方の杏樹も、姉を1人にさせてしまう不安と、それと同時にこれまでの昼の生活が失われる淋しさを感じていました。ある意味では「人として」生きていける時間を惜しむように、太陽の出ている日も小学校に通う杏樹。杏樹がついに大人として覚醒し、自らが好む血の嗜好が分かります。その嗜好が「淋しさ」というのが皮肉なもので、血を吸われた人間は吸われる事により淋しさから開放されるのですが、杏樹の淋しさは増す一方です。
かりんと共に家路に向かう杏樹。その時かりんが言った言葉は、今の杏樹に対してもっとも残酷な言葉でした。その時の杏樹と、1人で過ごす朝を迎えて淋しさが一気に噴き出すかりんの表情が読んでてつらかったです。
吸血鬼としても出来損ないで、人間とも違うかりんの「異端者の不安」が今まで大きく取り扱われていましたが、吸血鬼であること事態が異端であることを杏樹のエピソードを通して再認識しました。異形の者を扱う漫画としての王道の、異形者ゆえの悲しみが描かれています。
かりんの優しさ故の空気の読めなさが読んでいて胃が痛くなりましたが、オビのかりんの言葉の空気の読めなさは異常。「わたし表紙じゃないの!?」って、なんじゃそりゃ。かりんそんな性格じゃない気がしますが。あとオビの言葉、「恥じらいの学園ラブコメ」。この漫画がラブコメってこと本気で忘れてました