にじスプラ大会最大の大逆転劇、空星きらめの奇跡と各メンバーの奮闘

にじスプラ大会、非常に熱く、楽しかった。

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第3回にじさんじスプラトゥーン大会 - にじさんじ Wiki*

実力ごちゃ混ぜのVtuber箱内トーナメント。
普段見てる隙の無いガチ勢オンリーとはまた違い、それぞれの頑張りで大番狂わせが起きる、エキサイティングな大会だった。

語りたいポイントは無限にある*1が、一番印象に残った決勝戦第3戦、マンタマリアのガチホコバトルについての話をしたい
圧倒的な強さで勝ち進んだ不破湊率いる「あぐらWIN」が、決勝戦でも2勝を無傷で掴み、最後の3勝目も目前のところ、最後の最後で対戦相手の「世界取りに来ました」が大逆転勝利を果たした試合だ。

各チームについて

■チーム「あぐらWIN」

にじさんじ内最強プレイヤー、不破湊率いるチーム。
参加チーム内で実力を均等にするため、他3人はほぼ初心者。
チームメンバーを不破が鍛え上げ、不破のワンマンチームでなく、チーム力の底堅さで勝ち上がってきた。特に樋口楓の成長には、大会前から注目が集まっていた。

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■チーム「世界取りに来ました」

大会主催者のエクス・アルビオ率いるチーム。
短いスプラ歴ながらゲームセンスの高い葛葉の成長が著しく、初心者枠の一人がエース級に戦えることでチーム戦力の底上げに繋がった。

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【スプラトゥーン2】成長速度Xの吸血鬼【葛葉/エクス・アルビオ/でびでび・でびる/空星きらめ】 - YouTube

試合展開①劣勢、でび様の励まし

youtu.be

試合は↑動画の2:42:13~から。

中盤まで一進一退の展開。

試合の頃2分30秒、リードのまま「あぐら」の反撃をなんとか退けた「世界」。

しかし、自軍にあったホコ*2から目を離した隙をついた不破湊が、単身でホコを運びカウント7*3まで進める。ホコ持ちの大切さをメンバーに伝えてきた教官が、自ら証明したビッグプレーだった*4

一方、絶望的な状況に陥り、通話でもネガティブになりそうな所を互いに励ましあう「世界」。
特に、でびでびでびるがエクス・アルビオに向けた激励が印象的だった。

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エクスの「俺(がホコを)持つと進まない可能性あるな」は、スプラをよくやる人には「チーム内で一番強い自分がホコを持つより、ホコを任せて自分が前に出て無双するしか勝ち筋がない」という意であろうことは伝わると思う。*5

しかしでび様は、知ってか知らずか「お前がホコを持つんだ」と突っぱねた。エクスのホコ持ちを信頼していた。これまでのチーム戦略通り、エクスがホコを持つべきだと励ました。
エクスの裏の意図はどうであれ、自信を失っていたのは事実であろう。でび様は初心者に近いにもかかわらず、精神的支柱としてチームを鼓舞した。

今まで引っ張ってきてくれたエクスを逆に引っ張れて良かったと語るでびる【にじさんじ/切り抜き/でびでび・でびる】 - YouTube

大会後のコメントによると、チーム内でホコ持ちを担っていたエクスの腕に対して絶大な信頼を寄せていたのがわかる。

試合展開② 劣勢のまま最終盤へ

「あぐら」はその後も攻め続ける。「世界」は再び自陣深くにホコを持ち込まれ、やっとの思いで止めたのが残り1分44秒。*6

これまで攻め続けられた分、ステージ全体が敵インクに染まり、反撃の難しい状況に陥りジリ貧状態。

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マンタヤグラ残り1分8秒、塗り状況と取りたいホコルート

葛葉視点から見た残り1分8秒付近の状況。(矢印は付け加えた)
この①~③のいずれかのルートを取りたいが、全てが相手にきちっと抑えられてる。
①に行こうとしたホコ持ちの葛葉だが単騎では行ききれず、エクスの2キルを起点に②ルートに進路を変えるも相手の他メンバーの素早いフォローにつぶされてる。
「あぐら」のチーム力の高さ!

残り50秒も再び攻める「あぐら」、何とか止める「世界」。
しかしこの時、エクスと葛葉が不破を挟んでキルを取る。
試合終盤のこの1つのキルが、後々に影響を与える。

試合展開③ エビオの指示、きらめの奮闘

残り45秒でエクスによる「いったん塗ろう」の指示。塗り返す時間の惜しい、焦ってしまいそうな状況で、状況を少しずつ打開しようとする。

味方に前線を上げるよう指示するエクス。①の左ルートを葛葉、きらめが上がり、その隙にエクスとでび様は、よりゴールに近い②ルートへ。

ここできらめはデカいプレイをする。左前線に出た際に、対面した不破からキルを取ったのだ
この時残り22秒。後述するがこれはただの1キルではなく、不破は最後にスペシャルを使ってホコを確実に止める術を奪ったのだ。

きらめのラスト1分は大活躍すぎてクリップを作った*7

試合展開④ 混戦

②ルートを選んだエクスはでび様と共に止められた。

きらめは一旦引いて*8、味方の復帰先となる。先にデスした葛葉は、前線に戻りホコ周辺でタメを作る。

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マンタホコ、でびでびでびる視点、残り11秒

残り11秒時点の様子。ホコ持ちのエクス、先導役のでび様がデスして厳しい状況。しかし、「あぐら」からしても、込みいった場所にあるホコを奪い返すのは容易くない。
「あぐら」の方が前線復帰は早かったが、人数不利(4VS2)の中ホコと敵に圧をかけながら生存し、時間を作った葛葉(偉い)と、落ち着いて後退し距離をとっていたきらめ(偉すぎる)のおかげで、「ホコを相手に奪われないまま、全員の素早い前線復帰」が成立した。ここで大逆転の布石が生まれた。

試合展開⑤ 逆転のミサイル、ホコの大爆発

残り12秒、①ルートから生還し②ルート合流を目指していたきらめは、エクスの指示によりマルチミサイルを撃つ。*9
他メンバーの射撃も合わさり、ホコを割ることができた*10「世界」。しかもその爆発に巻き込まれ、相手が一気に3人デスした。
これまでこじ開けられなかった壁を、終盤の混戦とミサイルによってこじ開けてた。残った樋口を落ち着いていなし、ホコを進めて大逆転となった。

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ホコ爆発による3キル

あぐら全員の視点を見たが、不破・星川は壁を登って間もなくの、不意のタイミングでの爆発で、北大路はミサイルによって安全な場所からどかされたタイミングだった。下にいた樋口はミサイルによって足場が奪われ、最後の潜伏キルを上手く狙えなかった。
ミスと呼ぶにはあまりにシビアな、相手も意図しないドンピシャのタイミングで不運が重なり、奇跡の大逆転は起こった。

試合を解説したプロゲーマー、よしもとゲーミング カラマリのにしざわ学園は、勝因を空星きらめのマルチミサイルだと断言した。
このタイミングの良さは狙ってできたものでなく、偶然の積み重ね、まさに「奇跡」と言えるだろう。スプラトゥーンには奇跡が宿っている。

最後に 「不破湊は何故ガチホコを殺さなかったのか」

「世界」各メンバーの奮闘、強い意志が幸運を呼んだ大逆転劇だったが、不破湊のプレイを、その実力の高さを知る者なら疑問が残るのではないか。
「不破ならあのリード状況の中、確実にホコを防ぐことができたんじゃないか」、と。

実力者だからこそ、酷な目線で見てしまう。

不破の持つブキのスペシャルはナイスダマ。無敵状態から範囲攻撃を放つことができる。
スペシャルを安全に貯めて、安全圏に身を潜め、ローリスクで勝ちを確定させる。今大会でも、えま・おうがすと等が見せたプレイを、不破ならできたはずだった*11
それができなかったのは、前述のとおり、きらめに対面で倒されたからだった。

この試合の最大の勝因は、空星きらめが不破湊を倒したこのシーンだ。思わずデカいフォントにするくらいに、でかいキルだった。
不破湊の最後の1分をクリップしてる。

のこり27秒、樋口の指示により右ルート*12から来るホコを潰しに行った不破。エクスの指示により前線に上がるきらめと対面する。

不破は壁潜伏から正面に上り、一方的に確実に倒そうとする。ホコショットも飛び交い、不破と言えども余裕は少ない場面、確実性を取って背面を狙うような余裕はなかったであろう。
きらめは不破を視認できていないはずだが、念のため交えた横移動が不破の狙ったタイミングとちょうど重なり、難を逃れたように見える。

互いに被弾しながらデスには至らず、一旦壁を下がる不破。生存のためにシールドを貼り、かつ別ルートを進むホコを追いかけに行くが、珍しいミスを犯す。
追撃を防ぐためのシールドの位置がズレ、無防備になってしまった。
また、シールドがズレていたにもかかわらず、ホコへと急ぐがあまり無防備な背中をやすやすと晒してしまった。
そこを、きらめがちゃんと追いかけて咎めた。

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ズレてしまったシールドと、無防備な不破の背中

残り22秒のデス、これでラストのナイスダマがなくなった。

不破はえま・おうがすとのように、一人引いて確実にナイスダマを打てば良かったのではないか?これについても判断が難しい。
えまのチーム、四天王は、突出した選手はいないがメンバーの平均力が高いチーム。えまが後方で待機しても、自分より実力者もいるメンバーに任せる判断ができるだろう。
一方の「あぐら」は、鍛えたとはいえ不破が突出したチーム。課せられる仕事量も多く、ナイスダマ温存のために後退する判断は難しいだろう。
また、エクスがホコを持ち、葛葉は味方が倒したという報告も上がっていた。対面で不覚を取る相手は残っていないと考えるのが妥当だろう。

いつもの不破なら確実に勝てる対面だった。空星きらめを侮っているのではなく、不破湊はそういう域に達しているプレイヤーだった。
その前提条件を覆した空星きらめのジャイアントキリング。これこそが、彼女のマルチミサイル以上に大きかった、大逆転の要因だった。

最後に

まさか、このレベルのシビアな「択」を迫られる大会になるとは予想だにしてなかった。この試合だけでは語り足りないほど全試合熱く、全試合見てほしい。選手52人の各視点をそれぞれ見てほしい。あなたの可処分時間は死ぬ。

大会に関わった全ての方への感謝。一スプラ廃人として、ただただ感謝。
スプラトゥーンの楽しさを多くの人に知らしめた、思い出させた大会になったと思う。
願わくば大会後も皆さんがスプラトゥーンを愛してくれたらうれしい。

*1:不破湊のプレイ全て、笹木咲の爆発力、葛葉のセンス、魔界ノりりむのボム、レオス・ヴィンセントの荒らし、イブラヒムの立ち回りの上手さ、文野環の判断の速さ、終始堅実でクレバーだったフレン・E・ルスタリオ…みんながみんな、それぞれの強みを見せていた。そして実況の、特に加賀美ハヤトのフレーズセンス。これは今後もスプラ界隈に関わってほしいと思うくらい、見事だった。

*2:各キャラは「ホコ」というオブジェクトを持つことができ、それをゴールまでいかに近づけるかを競うのがこの「ガチホコバトル」のルール

*3:カウントは100から始まり0でノックアウト。ほぼノックアウトしないと勝てない厳しいリードを取られた

*4:近くまでホコを進めた星川サラ、先行して道を作り、ホコデス後も生存した北大路ヒスイの粘りも、不破の奇襲によるリードを産んだ大きな要因だった

*5:エクスはそれを婉曲的に言った。その選択肢もリスクがあるし、勝ち筋として不透明だから、自信がないけど背中を押してもらえるならやろう、という思惑だったんじゃないだろうか。

*6:サッカーで言うとポゼッションを支配され、枠内シュートをバンバン撃たれている状態。ただサッカーとは違い、最後にデカい1点を取れたら勝てるのがガチホコバトル。

*7:空星さんを間違って星空さんと書いてしまったのは申し訳ない。

*8:この引く判断!脳筋な僕にはできん。偉すぎる。

*9:終盤のガチホコは、特に負けている方が強引に前に進めようとデスがかさみ、終盤にスペシャルを使えない場合が多々ある。生存意識が高く視野の広いプレイングだったからこそ決定機にスペシャルが使えた。

*10:ガチホコは、通常状態ではバリアが張られ持ち運ぶことができない。どちらかのチームのインクが一定数多くぶつけられることで爆発を起こし、持ち運べるモードに変わる。

*11:えまが見せたのはガチヤグラであり、進行の速いガチホコではヤグラよりは確実性は下がるという面はある。

*12:「世界」から見たら左ルート=①のルート