「妹やめます」 でろでろ12巻

でろでろ(12) (KCデラックス ヤングマガジン)

でろでろ(12) (KCデラックス ヤングマガジン)

ヤンマガ連載。
「妹やめます」
そんな置手紙を残して、留渦は家出をしました。留渦を探す耳雄という、基本1話完結の漫画で、今までで最長のエピソードが幕を開けます。
でろでろの主人公・霊感体質ヤンキー耳雄と兄に振り回される妹の留渦。「留渦はしっかり者の大人」という印象があり、耳雄が何をしても結局は支えてくれる、寅さんでいうとこのさくらのような存在だと思ってました。だから、支える立場の子がフラフラしちゃったっている驚きがかなり強かったです。
よくよく考えると、家庭環境は複雑だし、兄ちゃんはトンチンカンだしで、不満が溜まって噴き出すのはおかしくありません。留渦はまだ中学生ですし。
「よくできた妹」という枠を取っ払って、等身大の留渦が見えた、そんな気がしました。
留渦の道中は普段のでろでろと同じくヘンテコな霊が出てくるギャグ調で進んでいくのですが、留渦の後を追う耳雄という構図にいつもには無い緊張感がありました。
2人の再開、そこでの2人の本音がぶつかり合い。キャラの内面に踏み込んでいました。

兄1人妹1人という設定は、最初は物語を進めるためのやりやすい構図というだけだったのかもしれません。のちに別居している両親とその事情を描くこてで、ギャグ調の中で描かれづらかった「兄妹の絆」を見せてくれました。最小限の人物・最小限の人間関係しか描かないみなみけと比べ、でろでろが家族の像を徐々に描いていったのは同じ雑誌ながら好対照だと思います。

キャラの内面を描くってのは、1話完結のギャグ漫画では結構な冒険だと思います。今回こういうエピソードを描いたのは、連載200回記念にあわせてということでしょう。押切先生に非ギャグの連載作が増えている今、こういったテイストの話が今後も増えるかもしれません。