虎眼先生が恐いので格納。
風雲児たち幕末編 コミック乱連載 みなもと太郎
- 作者: みなもと太郎
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2002/03/28
- メディア: コミック
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- 作者: みなもと太郎
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2008/12/26
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幕末の日本を動かした「風雲児たち」に魅せられた1人の漫画家。彼らを描くために、その漫画家は関ヶ原から描いた。それは何故か。呉智英先生の「マンガ狂につける薬」から言葉を借りる。
何故関ヶ原から始まるかと言えば、その時多大な犠牲を払って逃げのびた薩摩藩が、三百年後、明治維新に大きな力を発揮するからだ。
幕末の薩摩藩の活躍を描くためには、関ヶ原から描かざるを得なかった。そういう事を突き詰めていった結果、幕末以前の歴史・人物を描かざるを得なくなった。風雲児たちは、連載開始から30年近く経った今でも終わりが見えない一大巨編となった。
例えば、「日本は海で世界とつながっている」と鎖国の日本の中で海外を見つめ、口うるさく意見しまくった男、林子平。彼の意見は当時の権力者に無視され、彼の著書「三国通覧図書」は発禁処分となった。その70年後、彼の先見の明を証明するかのように現れたペリー。アメリカから国土を奪われそうになった時、それを救ったのは、日本人から忘れ去られていた彼の残した著書だった。
林子平だけではない、田沼意次の改革が、前野良沢の挑戦が、高山彦九郎の情熱が、高野長英の悲劇が、全て、その時代に結果を結ばなくとも、それが後の人々に影響を与え、時代を動かす原動力になっていった。だから、みなもと太郎は彼らを描かなければいけなかったのだ。
こういうと、重厚な物語だと思われそうだが、そうではない。風雲児たちは、あくまでギャグ漫画なのだ。ベタベタなコント、下らないギャグ、当時の流行を元にしたパロディなど、作者のユーモアが作品の中に散りばめられている。
作品内でエピソード、人物を描ききれなかったり、構成が飛び飛びになったり、歴史研究が進んでかつての記述が間違いである事が分かったり…これらを全てギャグにして笑い飛ばす。例えば、高野長英が終身刑という異例とも思える重い判決を受けた時、その理由を「お前はタイドが悪いっ」で済ませてしまう。おいおいそれでいいのかよ、と思ってしまうが、不当な判決に憤った作者の怒りをギャグに転じさせたのだろう。
パロディは時代の変遷と共に色あせてしまうが、当時を知らない読者のために、無印ワイド版全20巻には「ギャグの脚注=ギャグ注」が収録されている。僕の様な若い世代にとって、作品理解の助けとなると共に、かつての文化を知るこれ以上ない教科書となる。19巻でのつげ義春をパロった「実はまだ妻子の基にいたのです」は、高野長英のふてぶてしさをギャグにすると共に、ギャグ注で補完される情報はつげ義春という漫画家の功績とその影響を伝える。そのギャグ注を引用する。
言わずと知れた「李さん一家」のラストシーン。かつて、西洋のある批評に「死と結婚がもしもなければ、物語は終わることができないだろう」というのがあったそうで、それくらいお話とは「幸せになりました」と「不幸になりました」の2パターンしかなかったわけである。そういうわけで20世紀初頭、芥川龍之介が「羅生門」で発表した「下人の行方は誰も知らない」という、“つき放したラストシーン”は文学史上画期的な終わり方であり当時の読者は息をのんだのである。……それから約50年後、つげ義春がこの作品で「実はまだ、二階にいるのです」という、なんと“事態は全く変わらない!”恐るべきラストシーンをこの世に出現させたのであった。この画期的なエンディングが、小説でなく「マンガ」から誕生したことに、我々はもっと注目し、拍手を送り続けなければイケナイのである。
漫画研究家でもあるみなもと太郎の漫画論を、パロディを通して学べるのである。漫画ファンにとってこれ以上ない教科書…と、あまりそういう面を強調しすぎると敬遠されるかもなので、とっつきやすいギャグを1つ。漂流の末アメリカに渡る事になるジョン万次郎一行の中に「寅右衛門(とらえもん)」という男がいる。そいつの絵。
「僕トラえもん」という、日本人なら99%考え付きそうなベッタベタなギャグを出してくる。
ギャグで一番笑ったのが「幸福の白い旗」であるが、ギャグをいちいち説明するのはつまらないので行わない。ベタなコントを長々とやってしまうのは、場が深刻であればあるほど破壊力を増してくる。
風雲児たちの意思・歴史の伏線・下らないギャグ・ベタなコントと、様々な楽しみがつまった極上のエンターテイメントである。
・・・複数の作品紹介するのに初っ端から飛ばしすぎなので次からはもっとフランクにいきます。
風雲児たち - Wikipedia
マンガ狂につける薬 (ダ・ヴィンチブックス)
シグルイ チャンピオンRED連載 南條範夫 山口貴由
- 作者: 山口貴由,南條範夫
- 出版社/メーカー: 秋田書店
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率直な感想として、阿部川キネコが漫画でこのように描いている。
http://www.toranoana.jp/webdayo/mando_plus/mandop039.html
腸(モツ)出てるーーーっっ?!
いや、ホント「何でモツ出てんだよ」とツッコミたくなる。山口貴由はこれを大真面目に描いている。だから戦慄する。山口貴由の描く肉体は、グロテスクでいて美しく、見るものの印象に強烈に残る。
自分の女に手を出した弟子を集団で暴行し、自ら引導を渡す老剣士。記憶が錯乱し、かつて自分を陥れた人物への怒りを露にする。野心・恨み・嫉妬・怒りなど、激しい感情が渦巻いている。師の命令に忠実に従い、同門に集団で暴行を加える他の弟子たちの押し殺された感情とは対照的だ。
シグルイ体験版 - さよならテリー・ザ・キッド
未読の方に入り口としてオススメする記事。
よつばと! 電撃大王連載 あずまきよひと
- 作者: あずまきよひこ
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- 作者: あずまきよひこ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2008/08/27
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よつばという小さな女の子の目線を通して描かれる、楽しい毎日。愉快な隣人、子供よりも子供っぽい大人たち。起こる出来事は平凡なものばかりだけれど、それがどんなに素晴らしいものかを教えてくれる。
よつばというキャラが絶妙だ。目に映る物全てが新鮮に見える子供ならではの視点と、他にいないような風変わりな子という印象のバランスが絶妙だ。
ネット上だけでもあまりに多い数の言及記事があり、ここで紹介する記事をどれにするか悩んでしまう。とりあえず、比較的最近の記事を1つ紹介する。
¸Ü«æбuæÂÎÆIv8ª@æÂÎÆn[h{Ch
つまりしまうーはかわいいのである。
そこをなんとか メロディ連載 麻生みこと
- 作者: 麻生みこと
- 出版社/メーカー: 白泉社
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一風変わったタイトルの意図は、作中の言葉からうかがえる。
弁護士の仕事って
華々しく巨額の賠償金勝ち取ったり無実の人々を救ったりなんてほんのちょびっとで
そこをなんとかそこをなんとかって頼んだりなだめたり
そんなことの方が大半なんですね
チンピラのケンカや遺産相続など、派手ではないこじんまりとしたものばかり。これでも当事者にとっては大事件であり、それぞれの思惑が入り混じる。すれ違い・勘違いで、事件は急展開。地味な事件から濃密な人間ドラマが生まれる。
改世の比較的ノー天気な性格が作品の雰囲気を和らげるつつ、思いもよらない展開・発想から事件解決を目指す。メリハリが利いた構成が読者の目を釘付けにさせる。
作者は白泉社の少女誌で活躍を続けているのだが、先日創刊されたgood!アフタヌーンでも連載を開始した。「くらしのいずみ」で新規男性ファンをふやした谷川史子のように、これからも更に多くの人々に読んでほしい作家だ。
鋼の錬金術師
- 作者: 荒川弘
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
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- 作者: 荒川弘
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2008/12/22
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母を失った幼い錬金術師が、死者を生き返らせる禁忌を犯し、その罪の代償を背負うこととなる。はじめの方はその「設定の勝利」の漫画だと思っていたが、その認識は間違っていた。彼らだけの問題に留まらない、国家を超えた陰謀が背景にある一大ストーリーだった。ので語るのはさわりの部分だけで限界です。
20巻を越えた今でも、常に読者の期待を満たし続ける物語。
ギャグマンガ日和 ジャンプスクエア連載 増田こうすけ
ギャグマンガ日和―増田こうすけ劇場 (巻の2) (ジャンプ・コミックス)
- 作者: 増田こうすけ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/09
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ギャグ漫画のどこが面白いかというのはヤボに思える。そのため紹介するのは気が引けるが、今面白い漫画を語る時に欠かすことの出来ない作品だと思う。
いつかこの漫画の面白さを解説したいなぁと考えつつ、次に進む。
とめはねっ! ビッグコミックスピリッツ連載 河合克敏
とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
- 作者: 河合克敏
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/05/02
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とめはねっ! 4―鈴里高校書道部 (ヤングサンデーコミックス)
- 作者: 河合克敏
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/11/28
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涙なくては読めない。何故お前はそんな娘を好きになってしまったのか。苦労どころじゃないのは目に見えているじゃないか…
最新4巻にてガチャピンにちょっかいを出す女子が登場する。彼女の出現にご主人様はイラつきを見せるが、決して嫉妬ではない。自分の飼い犬が他に興味を持つことが癪なだけなのだ。異論は認めない。
ご主人様が発した衝撃の台詞がこちら。
『私はこんなナヨッとした男はキライなんです。』これ、目の前で言ってるんだぜ?ガチャピン、お前は泣いていい。
ツンデレブームなんてクソ食らえだ。俺が嫌だと言っている。女の子は優しい子が良いよ日野ちゃんみたいに。
あ、あと書道とかするよ。あまりにも主人公に感情移入しすぎて他の要素がどうでもよく思えてしまう僕は異常。
のらみみ IKKI連載 原一雄
- 作者: 原一雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/11/29
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ドラえもんやハクション大魔王に代表されるフィクションの定番、幼い子供のもとにやってくる「居候キャラ」。彼らが普通存在を認知されている世界。
彼らキャラを子供たちに斡旋する居候紹介所。不人気キャラのため居候先がなく、しょうがなくそこに居候をしているのがこの物語の主人公のらみみだ。
居候紹介所という設定が、キャラと子供の出会いと別れを毎回描くことを可能にした。毎回「別れ」→「感動」の繰り返しというマンネリを避け、コミカルな描写を挿入している。
代表的な例で「ドッタリ君」のエピソード。突然離れ離れになった者同士の再会という感動的な出来事にもかかわらず、ドッタリ君の「物忘れの激しさ」というギャグ要素を加えている。5巻収録の魔女っ娘メリィーのエピソードは、キャラと子供の分かれ・少年の成長という王道的テーマを真正面から描ききった名エピソードだ。詳しくは過去記事を見てほしい。
扱われるのは使い古されたテーマかもしれないが、それを意識し、パロディにしながら新しい「居候モノ」を描こうとしている。
原一雄『麦わらドリル』『のらみみ』 - 藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記
原一雄さんは、愛をこめて藤子不二雄的な世界を継承しつつも、クールに藤子不二雄を相対化し超克しようと試みている意識的なマンガ家だと感じる。
その2に続くかもしれない。とりあえず疲れたのでここまで。