不良漫画は苦手だけど、これはオススメ ナンバMG5

ナンバMG5 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ナンバMG5 1 (少年チャンピオン・コミックス)

週刊少年チャンピオン連載。現在11巻まで発売。
父親は千葉最強のヤンキー、母親は元レディース、兄は高校時代関東を制覇したカリスマヤンキー。そんなヤンキー一家に育った難破剛はヤンキーとして育つことを一家から期待されるという変わった環境で育ちました。期待にこたえ、中学では周辺の中学のアタマに。しかし、ケンカに明け暮れる毎日に嫌気が差し、普通の若者のように青春を謳歌したいと考えます。そこで一念発起。バリバリに固めた髪と特攻服を脱ぎ、普通の高校で普通の高校生として過ごすことにしました。しかし、剛がヤンキーとして名を上げることを望む家族の前では、従来通りのヤンキーファッションに。高校では普通に平穏に暮らしたかったのに、クラスメイトが不良に絡まれているところを(ヤンキーファッションになって)助けたことをきっかけに、結局ヤンキーとしての生活を外でも過ごす羽目になります。それでも平穏を守るため、学校の友人たちには自分の正体を知られるわけには行きません。家族の前ではヤンキー、高校では一般人という、剛の二重生活が始まります。
剛は元々非常に真面目で優しい少年です。不良になったのも、家族の期待にこたえるため。ケンカをするのも仲間の期待にこたえるため。そんな彼が普通の高校生になるということはある意味で家族への反抗です。ここで「期待に応える=不良」「反抗する=真面目」というねじれ現象が起こってます。
ヤンキーが脱ヤンキーを目指す、という点では、西森博之先生のお茶をにごす。が似ています。一方は正体を隠しながら、もう一方は周りの人間に自分の悪評を知られている中で普通の人を目指すという違いが両者とも面白いので、どちらかを読んでいる人はもう一方も読むことをオススメします。多分お茶をにごす。の方が読んでる人が多いと思いますので、今回はナンバを紹介。ここではお茶をにごす。について言及する間がないので下のリンクを参考にどうぞ。
2007-04-05 - さて次の企画は
悪魔、茶道部に入る。 - お茶にごす。(1) - 真・業魔殿書庫

ヤンキー漫画というジャンルは苦手なので、普段ほとんど読みません。苦手な理由に作品内のヤンキー理論に嫌気がさすからです。なんと言えばいいのか、明らかに倫理的に良くない行動を取る不良たちが作品内で「男らしい」だの「かっこいい」だの言われる姿を見ると引いてしまって。これがファンタジー漫画なら個人的にアリなんですが、基本学生がメインの不良漫画だと妙にリアルで引いてしまいます。(これはあくまでも個人の趣味の話。あと西森先生は別。)そのため最初はナンバを連載でも追っていませんでした。読むきっかけになったのが、関口正宏という人物のエピソードでした。
関口は剛と中学時代の同級生。とは言っても、関口はガリ勉だったためヤンキーの剛との接点はほとんどありませんでした。ただ、何気ない関口の言葉が自身の不良としての生き方に疑問を抱き始めていた剛に普通の生活を目指すきっかけになり、不良なのに勉強に励む剛に陰口をたたく人を関口がいさめたことがまた剛を勇気づけました。関口は強にとってヤンキー生活から足を洗えた恩人なのでした。
関口は進学した高校でイジメにあっていました。その現場を目撃した剛。剛は関口のおかげで今の自分があると言い、力になると申し出ます。そんな剛の気持ちが、日々のイジメで気持ちが折れそうな関口の心に勇気を与えました。エスカレートするイジメのなか、剛がいったいどのような行動に出るか毎回ハラハラさせられました。
友情という、青臭いテーマを正面から描き上げ、読者をヤキモキさせながら最後は感動させてくれた名エピソードでした。関口が「ブサイク・弱い・イジメられっ子」という漫画では即座にザコキャラ扱いされがちな属性の持ち主にもかかわらず、内面の優しさ・強さを見せてくれたのがまた素晴らしかったです。
ヤンキー漫画が苦手という個人的な志向のため、ハワイでのエピソードなんかはそこまで好きでないのですが、関口とニートの兄のエピソードは特に好きです。単純な暴力に頼らず、1つ1つの行動に説得力があるのがいいです。
この漫画にも一応藤田深雪というヒロインがいるわけですが、剛の正体を10万円で売ろうとしたエピソード(どんなヒロインだよ)で完全にお笑い担当のイメージがついてしまいました。ここで黒ではなくお笑いキャラになるあたりは藤田さんの憎めない人柄と剛へのアフターフォローがあればこそ。しかしなんで藤田さんがモテるんだ?
■藤田さんのスペック
・一応モテる(年に何回か告白される)
・美術部だけど絵が園児レベル
・そのくせ自信は一人前
・剛を売った一件で周りから「守銭奴!」コール
・美術部なのに好きな絵描きがどおくまん

藤田さんもそうなんだけど、登場人物に憎めない愉快なキャラが多くて明るい雰囲気なのもいい感じです。あと剛の妹のアホ娘っぷりも好き。大好き。吟子は俺の妹。