前回の続き。
Vtuber楽曲大賞で、推し箱であるホロライブ勢の活躍を再確認したわけですが、これまで見てなかった多くのVtuberの楽曲に触れると、色んな人たちに興味が沸いてきました。
特に気になったのがMonsterZ Mate*1で、今回は彼らの話をします。
MV部門4位
楽曲部門12位
MZM未視聴の僕にとっても、メンバーのコーサカ氏*2は他Vtuberのコラボ動画*3でよく目にしたのですが、本線で何をやってるのか知りませんでした。
今回いくつか動画を見て、Vtuber界隈、特に音楽系のVにとっての存在感のデカさを感じました。
バラエティ色の強い「動画勢」
吸血鬼でラッパーのコーサカと、狼男でボーカルのアンジョー氏*4による音楽ユニット。
「歌ってみた」出身であることを公表している、Vtuberの中では異色の存在。現在でもオリジナル曲の作詞は歌ってみたの名義を使用しています。*5
MZMのアーカイブスをいくつか見た所、「編集された動画の多さ」がまず印象的。
Vtuberの全体的な傾向として、「動画から配信へ」というのがあります。
「短く編集された動画」から、「生放送とそのアーカイブス」への変移。
生配信の一体感は楽しいのですが、短い時間に旨味が詰まった動画の楽しさは配信にない魅力であり、ただコストもかかります。
MZMは、今となっては少数派となった動画勢*6。動画の特徴として、
- テンポの良さ、テロップ、演出など、凝った編集によるおもしろ動画
YouTuberにはスタンダードで、Vtuberにはもはやオールドスタイルなのかも - 3Dモデルでの臨場感のあるリアクション
- 多くのVtuberとのコラボ
- 下ネタ多様の男子の馬鹿話
等があります。
彼らの定番企画「誰が持っているか王選手権」=「ロシアンシュー対決」は、様々なゲストを容赦なく追い込むコーサカの小気味よい仕切りが新鮮。
TVバラエティ、特にとんねるずの影響を強く感じます。
下ネタ系ネタ動画での恐らく最高傑作。強いエピソードを十二分に生かすコーサカの話術。
虹乃まほろがバルスを出禁になった理由に一同驚愕!涙が止まらない……! - YouTube
コラボの雰囲気の良さ、3Dの動きのにぎやかさ、しょうもないネタがテンポよく編集されてキレのいい動画に仕上がってる、彼らの魅力が詰まった動画と思います。
テンポの良い編集と楽しいノリが彼ら動画の良さだと感じます。
音楽はガチ、のギャップが映える
彼らの本線は音楽で、オリジナル曲をコンスタントに発表しています。
普段の馬鹿話とはギャップのある、本気でかっこいい音楽。
特に、普段のネタ動画では朴訥とした印象のアンジョーが、いざ歌うとなると迫力のある美声をみせます。
ミュージシャンとしてもバラエティタレントとしても本気でやってる姿を見せることで、ギャップが見れて相乗効果があるんだろうなと。
チャンネルでは楽曲制作に関する配信・動画もあります。
アルバム収録曲を紐解く!歌詞解説配信 その1 - YouTube
「音楽」という成果物そのものだけでなく、制作過程もコンテンツとして見せている感じ。Vtuberとしての自分たちの存在をフルに活かそうという気概を感じます。
映像の高いクオリティは所属企業Balusによるもののようで、企業Vとしての強みが感じられます。
多くのVtuberとコラボ
Vtuber、特に音楽Vはどうやら横の繋がりが強いようですが、それにしてもMZMは顔が広いです。
プレイリスト動画コラボには2020/12/24時点で107本、ゲスト出演に47本と、かなりの頻度。
所属企業Balusの同僚Vや、半レギュラー状態の天開司さんや朝ノ瑠璃さんなどの他、毎回多彩なゲストが登場しています。
長年ニコニコの歌ってみたで活動してきた人脈*7だったり、所属企業の繋がりで*8他の企業Vを呼びやすい環境があるかと思いますが、第一にVtuberとしての活動を通して広がった人脈を活かしているのかなと思います。
Vtuber同士の繋がり
例えば2018年末に行われた第1回V紅白。
それまで登録者数が1万人に届かず、伸び悩んでいたMZM。
多くのVtuberの曲を配信するこのイベントに参加したことで視聴者の注目を集め、以後の活躍に繋がっていったのですが、その打ち上げ配信。
MZMのVtuberとしての活動が、バズる前から同業者から「動画が面白い」「音楽がかっこいい」と評価され、応援されていました。
その成果が出て感極まって泣いたというコーサカを祝福する、打ち上げ参加者達。
界隈が頑張っている同業者を応援し支えるという、ほっこりするエピソードです。
また反対に、彼らが支えたことで他のVが活動に繋がっていった例もあります。
顕著なのが、ちゃらんぽらん隊でしょう。
2020年3月に解散したVtuberユニット「ちゃらんぽらん隊」。「3Dの動きを駆使したVtuber同士」ということでMZMとのコラボも多かったです。
卒業=V活動の終わりを、MZMなりの計らいでコミカルに送り出そうという企画の中で、答辞を行ったumaさん*9だけは真剣なトーンでMZMへの感謝の言葉を述べたのでした。
歌ってみた出身・前世公開組への忌避感を持ちながら、MZMの活動に触れることで敬意に変わっていったこと。
交流が生まれたことで心の距離が近くなっていったこと。
彼らのオリジナル曲魔法なんかじゃないをMZMが評価したことが、作詞作曲のumaにとって「今後も音楽を作って歌い続けていこうと思った理由の一つ」だと語られました。
ちゃらんぽらん隊終了後、一部メンバーは浮遊信号を結成。
コーサカを兄貴と慕うuma*10と歌ってみた時代からのコーサカのファンのあとりさんという、MZMへの巨大感情に溢れたこのユニットは、オリジナル曲そして檸檬は爆発するでVtuber楽曲大賞にランクインしています。
MZMの人脈、交流が、彼らの活動だけでなく、コラボ先の活躍にまで波及している一例かな、と。
浮遊信号のumaはMZMと共に、今夜行われる第3回V紅白にも出場します。
【#第3回V紅白】今年最後に皆でもりあがろう~~!! - YouTube
V音楽シーンの開拓者
Vtuber音楽大賞2020では、主催者の一人、飯寄雄麻氏がこのようなコメントを寄せていました。
栄冠は誰の手に?約3500人が投票した「VTuber楽曲大賞2020」結果発表 - 音楽ナタリー
MonsterZ MATEについて飯寄氏は「第一人者であり、道を切り拓いている人たちという印象がすごくある。今バーチャルシーンで活動している人は、ある程度舗装された道の上を歩いていることを自覚して、MonsterZ MATEのように新しいことを切り拓くエレルギーを持って活動してほしい」と語っていた。
シーンの開拓者という高い評価です。
短い期間に動画や活動を見返した自分にとっても、コラボ動画、ライブイベントの出演・主催、他Vのオリジナル曲カバーや楽曲コラボ等、MZMを通して知ったVが多くいます。界隈自体を盛り上げようとしている気概を感じます。*11
Vtuber、女性ばかり見がちな人、僕も含め結構いると思うんですよ。
ましてや「歌ってみた出身の男性2人組ユニット」なんて、忌避感も結構強い。
ただ、MZMはシンプルに面白いし、多彩な活動をやってるので、追いかけるVの1組に加えると楽しいんじゃないかなと思います。おすすめです。
🐺🦇MonsterZ MATE(アンジョーとコーサカ) (@monsterzmate) | Twitter
VTuberとはただの言葉だ。音楽ユニット「MonsterZ MATE」は「エンタメ」という区画で戦っている(QJWeb クイック・ジャパン ウェブ) - Yahoo!ニュース
既存のVtuberの枠組み、考え方とは距離感を取っています。
アンジョー 枠組みに定義づけられちゃうのが性格上いやで。ぼく自身はVTuberという名前を背負っているつもりはなくて、エンタテインメントをやっている意識のほうが強いんですよね。
「un:c」でも「アンジョー」でも根幹は「ぼく」という人間。どっちでやったとしても自分でやってきたことじゃないですか。全部言いたい。だからイコールにしているんです。なんでやってきたことを隠さなきゃいけないんだろう、と。
「Vtuberらしさ」「一般的なVtuberの在り方」には距離を置き、自分たちの信念と行動理論で活動しながら、Vtuber界隈とそこで活動するVtuberに対して真摯でいるのがMZMの魅力なのかなと。
私がMonsterZ MATEを推す理由|36/サブロク|note
MZMの動画を見るにつけ、Vtuber界隈に対する批評性や新しいことに挑戦しようという姿勢を目の当たりにする。前に進んでいこうとする意志と高い技術の両方を持っていて、そして何より楽しそうにしているMZMはまぶしく、私たちに見たことのない景色を見せてくれるのではないかと思わせる。だからこそ私はMZMを推しているのだ。
【祝MZMメジャーデビュー】MonsterZ MATEの軌跡まとめ - VTuberが広がる世界
苦戦していた2018年頃の軌跡。
*1:以下MZM
*2:以下敬称略
*3:例えば、以前から見ていた甲賀流忍者ぽんぽこの24時間配信などでゲストとして出てました
*4:以下敬称略
*5:例えるなら武藤とムタの関係──高坂はしやんが語る、VTuber「MonsterZ MATE・コーサカ」の可能性 – PANORA参照
*6:配信もするけど
*7:例えば千年愛の振付を担当した暴徒さんは踊ってみた出身で、現在はヒメヒナの動画ディレクターをやっている
*8:ライブプラットフォームのSPWN、ライブイベントTUBEOUT!の運営等行っている
*9:以下敬称略
*10:ちゃらんぽらん隊終了後も、ちょくちょくMZMの動画に協力したりコメント欄に出没したりしている
*11:ちょっと話がそれますが、ここ2か月でハマった推し箱・ホロライブのメンバーは、箱内コラボを頻繁に行い(例)、箱自体を強くしていくことで自分たちメンバーに還元していこうという方向性を感じます。にじさんじにもそういった動きを見て取れますし、他の企業もそうでしょう。MZMは、それを箱の枠を取っ払ってやってる印象。