隠れた「秀作」 ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。

新潮社が全然刷らず宣伝もしなかったくせに「単行本が売れないから出さない」とかいちゃもんつかれて連載終了した、ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。」の3・4巻が発売されました。これで完結。もっと読みたかったなぁ。

ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 3 (BUNCH COMICS)

ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 3 (BUNCH COMICS)

ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 4 (BUNCH COMICS)

ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 4 (BUNCH COMICS)

ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 1 (BUNCH COMICS)ゴーゴー・こちら私立華咲探偵事務所。 2 (BUNCH COMICS)

やたら長い文になってしまったので、あらすじとかそこら辺はウィキペディアにまかせます。
ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。 - Wikipedia
これは傑作だ!と強くオススメするというより、気軽に楽しめる漫画です。

3・4巻のポイントは新キャラ、ポッチャリ局長、ラブコメ展開です。

・新キャラの1人、野武士銀行の取立局の局長、佳名芝優飛由緋。3巻が初登場。
華咲探偵事務所と敵対する組織の局長です。華咲サヤが借金を踏み倒しているのが悪いのですが。いわばライバル登場といった感じなのですが、この人も変な人でした。しおりちゃんとは別方向のメルヘン脳の持ち主。自分の世界にすぐ浸ります。借金取立のために何故か人型汎用兵器を開発。自ら乗り込み悪質な債権者=華探を踏み潰しにきます。突然現れた巨大ロボット、設定や見た目、セリフがエヴァガンダムの露骨なパロディ。外見似せすぎなんだけど大丈夫なんでしょうか?華探側も巨大ロボットを繰り出すなどやりたい放題。突如始まったロボットバトルが良い感じにタガが外れてきた象徴になってます。番外編ではどう見ても赤い彗星な仮面を着けてジオンの量産機っぽいのに乗り込みます。やりたい放題。
由緋を語る上で外せないのが取立局のドングリ頭。初回から出てるのに名前が無く、それをネタにされる不遇のキャラ。1人突っ走る非常識な由緋に必死でツッコむ苦労症の常識人。華咲サヤ⇔小金田一の関係性がそのまま佳名芝由緋⇔ドングリ頭に置き換えることが出来ます。由緋は正にもう1人の局長、第2の主人公。
もう1人の新キャラ、野々原右左子。
17才の高校生。期間限定とはいえ華探の新メンバー。登場が遅かったためあまり活躍する場が得られなかったそうなキャラ。その分作者の愛情が注がれていて、その辺が単行本の描き下ろしにも現れています。デレを見せきる前に連載が終了してしまったツンキャラ。
最後の華探メンバー魚崎さんなんか登場してすぐに連載終了。どんなキャラかも良くつかめないままでした。


・3巻以降の華探を語る上で外せないのが、ヒロイン華咲サヤ子のポッチャリ化。
ヒロインが太るってのは中々ないことですね。知りうる限りではグルグルのククリがいますが、あれは絵柄の変化によるものですし。
太るといっても、少々肉が余るくらいの絶妙な具合。これが実に可愛らしい。ファンの間でもかなり好評だったみたいです。性格も何だか可愛らしくなりまして。普段のキリっとした体型と豪快な性格とのギャップも楽しいです。


・そのギャップにやられてしまったのが小金田一君。この男、ポッチャリ萌えでした。ということで局長プニ化によりラブコメ路線が強化されていきます。
もともと小金田一君はしおりちゃんが好きだったわけですが、ポッチャリした局長に心を惹かれます。クソ真面目なのでしおりちゃんと付き合ってなくても2股できない男。局長にときめく度にテンパってしまいます。しおりちゃんは小金田一が自分のことを好きだと知り、浮かれ気分。まんざらでもない様で。局長も小金田一を気に入り、三角関係となるわけですがドロドロすることはありません。局長のおおばっぱな性格としおりちゃんの人の良さのおかげでしょう。3人のシリアスな三角関係もそれはそれで面白そうなのですが、それをしなかったのはこの漫画が「軽さ」をかなり意識しているからだと思います。
2人の女の子に好かれることになっても、相変わらずテンパっている小金田一。この男は最後までうざったい男でしたが、そこをひっくるめて愛すべき良いキャラでした。


・ドタバタコメディとして基本的にベタな作り。規格外な人物に振り回される常識人といった基本的な図に、ラブコメやパロディ、ちょっといい話なんかが適度に投入されます。ベタなのですが、堅実に作られていて卒がない感じ。
ポトチャリポラパさんの1巻レビュー
「ほどよくつまらない」と辛めの感想をわざわざ引用したかというと作品の特徴がきっちり捕らえられていると思うからです。以下引用。
そう、ベタながら丁寧にドタバタさせ、一定のクオリティを保ちつつ、どこかに極端にぶれるわけでもなく、平均的な、お約束ギャグを繰り出しつつ、うまく流れていく。
「こんなの最低。こんなのが掲載されている雑誌は絶対に読まない」と思われるはずもない、雑誌にあってジャマにならないヌルさ。

つまるつまらんの感想は個人差がありますが、作者の「漫画の上手さ」が常にあり、そこは誰が読んでも楽しめるのではないでしょうか。話が進むたびにキャラの回し方や遊び心がどんどん良くなってきて尻上がりに面白くなっていきます。3・4巻は面白さのピーク。これで終わるなんてとんでもない!1巻を読んで微妙に感じた人は是非とも続きを読んでほしいです。
3・4巻の売れ行き次第では続編もあるとのこと。熱心なファンもいるのですが、この漫画の良さはむしろ万人受けしそうな普遍性にあると思います。実際には打ち切られてしまったわけですが。何でだろう。もっと本屋で見かけるようになったら良いなぁ。
コメディ作品が致命的に少ないバンチには、華探みたいな気軽に読める漫画を推すことが新規購買層を増やすきっかけになると思うんですが。そういうライトな読者はアンケートを書いたりわざわざ注文してまで単行本買ったりする人は少ないと思いますが、そういう層を意識しないとジリ貧ですよ。以下2ちゃんより引用。
401 :名無しんぼ@お腹いっぱい :2007/03/18(日) 16:17:29 id:uHjHlf280
探偵は途中からバンチを読み始めた層には読みやすい、
ジャンプとかで売上げに関らずギャグマンガを重宝しているのも
こうした中途読者をつかむ為と分からないのかな、バンチは。

バンチの既存の読者層で探偵の人気が出るわけ無いんだから
隔週刊連載によるコミックス化の先延ばしなどの
対策で良かったんじゃないかな?

あと、こうした漫画は新規の読者のみならず
"新規の投稿者"を掴む上でも重要だと思う、
かつての劣化原哲夫を問答無用にプッシュの
流れだとバンチに未来はないと思う。


・特に漫画好きだという人でなくても程よく読まれ、ややオタ向けの作品も受け入れられる懐の深い雑誌。ヤングキング系やヤングマガジン系に良くなじむと思うので、もしバンチで連載することがなければそういう雑誌に行ってもらいたいです。アワーズみたいな重度の漫画好きが読むような雑誌よりもそっちの方が魅力を発揮できると思うので。


・個人的な後悔として、毎週大量の漫画雑誌に目を通して生活費削って漫画買っている身としては、好きな漫画が1〜2作品あるだけで雑誌を買わないし、金を払ってまでアンケート出したり出来ません。でもこういうことを毎週自分がやってたらもしかしたら華探打ち切られなかったかもと思うと残念でなりません。


●4/13追記
こんな長ったらしい文を読んでくれてありがとうございます。もっと読みやすい記事を書いたので良かったらそちらも読んで作品の雰囲気を味わってください。

ゴーゴー♪こちら華咲探偵事務所。 名場面集 - 漫画(ry跡地