変態キャラを魅せる匠の技 マンガ家さんとアシスタントさんと

マンガ家さんとアシスタントさんと 1 (ヤングガンガンコミックス)

マンガ家さんとアシスタントさんと 1 (ヤングガンガンコミックス)

ヤングガンガン少年ガンガン連載。
パンツ大好きなマンガ家、愛徒勇気の周りには、美人なアシスタント2人・美人な編集者・美人な管理人さんなどが何故か集まっています。ぶん殴りたくなる様なご都合ハーレム設定*1ですが、この漫画のキモはハーレムラブコメ的展開ではなく主人公・愛徒勇気のキモカッコワルさです(断定)。それのみです(断定)。
ここまで妥協せず、ブレない「気持ち悪さ+カッコ悪さ」は職人の域。言動はもちろんの事、場面場面の表情・姿勢・肌やら服やらの質感、全てが「変態・愛徒勇気」を変態として強力に印象付けます。
その表現のこだわりを、「姿勢」を例に挙げてみます。

アンケートが最下位と聞いたときの愛徒。この腰のくねり具合がまた生々しい。
イスに座っていたのですが、動揺して床にへたり込みます。心身ともに弱弱しく、この様な場面では所かまわずその場にへたり込みます。
リアクション芸として素晴らしいです。「動揺したらへたり込む」が毎回徹底されていて、愛徒の情けなさ・弱さ・オーバーリアクションのウザさが妥協なく現れています。

見知らぬ男に言い寄られて動揺する愛徒。完全に腰が引けて、体重を支えきれず後ろの壁に預けています。内股なのもポイント高し。表情・台詞は当然として、全身が彼のダメっぷりを表現しています。

喜ぶ愛徒。幸せな場面にもかかわらず、この心もとなさは匠の技。

どのコマでも愛徒は徹底してカッコ悪い。あまりにダメダメな主人公に対してなんだかんだで周りの女の子たちはやたら優しいというハーレム漫画の典型的な展開でありながら、それを上回る愛徒のキモカッコ悪さ。「ダメな男でも愛してくれる」ってのは非モテオタクにとって女神の様な存在であり、だからこそそういうジャンルは廃れないのですが、この漫画の女の子たちに同じ様な感情を抱くでしょうか?愛徒があまりにもダメダメすぎて、感情移入できません。女の子たちは愛徒のダメさを際立たせる舞台装置で、愛徒という「変態を観測する」漫画なのではないでしょうか
可愛い女の子を出してきたのは読者サービス的な面もあるでしょうが、「美味しい状況にもかかわらず全く活かせない主人公の駄目さ」が際立ちます。
展開は毎回あまりにもご都合的で、そこでの面白みはあまり感じられないのですが、にもかかわらず毎回強いインパクトが残るのは何故かと思えば、その理由は愛徒だと思うのですよ。都合の良い流れだからこそ活きる愛徒のウザさ。だって「女の子が優しくしてくれたからボク頑張っちゃう」的オチの連発なんですよ?普通のコメディだったらぶん投げたくなる*2様なオチを受け入れられるのは、それが作品の魅力である「愛徒のウザさ」を演出する1つの要因だからではないでしょうか。
ウザいウザいと言いながら、何故か憎めない愛徒なのですが、彼が本気で不快に感じるとこの漫画はきついんじゃないでしょうか。強い存在感があるからこその弊害でしょうか。
マンガ家さんとアシスタントさんと 1巻 ヒロユキ ヤングガンガン・少年ガンガン スクエアエニックス - クレイジーワールド 〜漫画レビューまとめ〜
他サイトレビュー。

*1:まぁ「ぶん殴りたくなる」とか言っておきながら好きなわけですが。あれです、ツンデレです。

*2:2回目。ツンデレです。