ふおんコネクト!を読んで感じた、きらら系4コマと非きらら系との差

マスコミを切ってたり最新号がAYA STYLEだったりで気になったふおんコネクト!を「さてどんなもんかい」と立ち読みしてみたら、思いのほか面白かったので既刊2巻まで買いました。
「思いのほか」というのは、自分の中できらら系*1の打率が低いからです。ファミリー向け*2に比べると、個人的に気に入る漫画が少ないです。もちろん中には好きな漫画もあり、これもその1つとなりそうな予感。
連載をいきなり読んでも、楽しそうな雰囲気・テンポの良いギャグ・可愛い女の子の水着<重要!>*3なんかが伝わってきました。ただ、キャラの像*4やその相関関係が掴めればもっと面白くなるだろうと思ってとりあえず1巻読んでみました。

ふおんコネクト! (1) (まんがタイムKRコミックス)

ふおんコネクト! (1) (まんがタイムKRコミックス)

ふおんコネクト! 2 (まんがタイムKRコミックス)
まんがタイムきらら連載。

★概要
ちびっ子で先生の長女。しっかり者の次女。地味な三女。長女の生徒で次女の友人が主人公ふおん。

★絵柄が分かりづらい

で、一度読んでの率直な感想。ちょっと分かりづらい。というか読みづらい。
自分がきらら系4コマが苦手な一番の理由、ゴチャゴチャしてて読みづらい絵柄がやはり引っかかります*5。最新号を読んだ時は気にならなかったので、それは連載を経るうちに洗練されていくのか水着回だから気にならなかったのかは今の所分かりません。2巻終盤も結構ゴチャゴチャと感じました。
でもまぁ絵柄は好みですからね。それどころか、非常に上手い、映える絵です。絵が好きという読者もいると思います。ただこういう絵は大ゴマでドンと見たいと個人的には思います。
絵に関して、非常にしっくり来る意見。

『ふおんコネクト! 2巻』の感想|まんが栄養素

絵が上手すぎるがゆえに絵の書き込みが多すぎて非常に読みにくい作品です。


★キャラが分かりづらい

絵柄もさることながら、キャラの相関が掴みづらい。キャラが掴めないと、「このキャラが何故この様な行動をするのか」がピンとこないのです。それが分かってきても、その関係性が掴めないと、キャラの絡みを見ても置いてきぼりになってしまいます。

例えば、3姉妹の関係性。苗字が違ったり、血が繋がってなかったりします。これは1巻のあとがきでも分かりづらいという読者からの指摘が合ったようです。この点はその後順次語られていきます。
例えば「三女が次女に対して百合的な感情を抱いている」というシーンがあって、そういう妹の気持ちが最初は分からず「突然」そういう描写が出てくるように感じました。読み返してみれば最初からそういう描写をしていて、自分の読解力の無さとも言えるのですが、僕には最初違和感がありました。
他にも、次女と主人公の友人関係、担当教師でもある長女との関係性も。そこら辺の問題は話が進んでいくうちに解消され、2巻までキッチリ読めばサブキャラまで含めた人間関係が把握できるので問題ないのですが、逆に言えばキッチリ読まなきゃイマイチ良く分からないという事になります。

★ここでの「分かりづらい」は相対的な感想

そもそも普通の漫画はそれで当然です。ストーリーの筋や雰囲気は最初からある程度読まなきゃ分からないし、2巻まで読んで大体把握できるなら結構親切な作りです。ただ、ファミリー向け四コマ漫画*6が「やたら初見に優しい」ため、相対的に「厳しい」と感じてしまうのです。きらら系はファミリー向け四コマに比べて「私たちはこういうキャラです」「この漫画はこういう漫画です」ってのが少ない気がします。ふおんコネクト!もそのためキャラとその関係性を掴むのに手間取りました。
どういう事か、非きらら系、まんがホームまんがタイムオリジナル連載の人気4コマ漫画「らいか・デイズ」で説明します。

★一見さんにも分かりやすい「らいか・デイズ

らいか・デイズ 1 (まんがタイムコミックス)

らいか・デイズ 1 (まんがタイムコミックス)

花丸小学校6年2組
春奈来華
児童会会長

初期のらいか・デイズは、最初の4コマを「来華が如何に優秀な小学生か」というのが分かるエピソードが描かれる事が殆どで、その最初の1コマに上の文が使われます。その後、そんな来華の日常や意外な一面などが描かれます。最初に「来華は優秀な小学生」という分かりやすい提示がされるからこそ、読者がそれを知り、その子の日常は把握しやすく、意外性は映えるのです
上の文から始まるパターンは、2巻〜3巻くらいまで見られ、徐々にその数が減り最近では殆ど目にしません。らいか・デイズは雑誌の顔、人気作であり、雑誌を読む多くの読者に認知されている作品ですが、それでも初見の読者にもすんなり作品が分かるように毎回工夫されていると言えます。これは、製作者側*7の「初見の読者に分かりやすく」という意図が強く感じられます。今現在それがされていない事は、ネタ切れの可能性もありますが、充分に認知されている作品だという判断からだと思います。

★当然、弊害もある

単行本で読むと、「花丸小学校〜」のくだりが毎回あるのはくどいと感じる事があります。(アニメの)ドラゴンボールで毎回先週のあらすじが長々と続いてウンザリする感じ。6ページに1回「花丸小学校〜」があるわけですから。これは雑誌の時は意識しない、単行本ならではの問題点です。

ふおんコネクトの話に戻ります。

これを今更指摘しても今更なのですが、初期のとっつきにくさで手に取らない読者が出てくると思います。自分も1・2巻続けて買わなかったら多分続きは読まなかったと思います。きらら系がやや苦手な自分だからこその意見で、きらら支持層には違うのかもしれませんが。元々「狭い客層で深く」がモットーの界隈だと思うので問題ないのかもしれません。
もちろん、読者側の理解の問題でなくただ単に「初期の作者の拙さ」と「その後の成長」という面もあるかも知れません。

★でもふおんコネクト!すっごく面白いよ!
散々DISったから帳尻合わせとか出なく、本当に面白いんですよ。「徐々に」面白くなる。キャラやら雰囲気が掴めたら、その後は一気にツボをついてきます*8。一度掴んだら、最初はイマイチに感じたはずの最初の方まで面白くなって、一気に2週・3週してしまいました。
4コママンガにおける「きららハードル」を超えたところにある面白さ。 - たまごまごごはん

物語文脈を読み取る力が必要になる作品ですが、だからこそじっくり読み込んで理解したときの面白さは、半端ではありません。かわいいだけじゃないんだぜ。

ハードル越えた!愛=理解!
いやー、初見でスルー気味だった三女→次女の百合な所が随所にちりばめられてたり、ふおんと長女が似た者同士って分かったら2人がつるんでるのが微笑ましくなるし、家族関係の複雑さを分かってから読み返すと「あ〜あのシーンはこういうことなのね」と繋がったり。
殆どの場合初見が一番面白いであろうコメディ漫画で、たまにある「読めば読むほど面白い漫画」といえると思います。これは、良くも悪くもあっさり読めるファミリー向け4コマには味わえない感覚です。

出版社が同じ2つの作品の、この差って「雑誌重視」か「単行本重視」だと思います。むしろ「ライト」か「ヘビー」かと言った方が良いかもしれません。ふおんコネクト!も、雑誌で読んでも面白い作品でしょうが、面白さをフルに楽しむにはずっと続けて読む必要があるんじゃないでしょうか。その点、らいか・デイズは、初見でも結構面白さが伝わってくると思います*9。作品の優劣でなく、あくまで方向性の違いです。

★自分の中のきららハードル
この「初見のとっ掴みにくさ」は、ふおんコネクト!だけでなく、きらら系全般に対する自分の中のハードルの一番大きなものです。今回はそれを「とりあえず買ってみる」という強攻策で乗り越え、大満足という結果になりました。この先もハードルを乗り越えるのか、それとも落とし穴にはまるのか。とりあえず好きな作家・作品が比較的多いまんがタイムきらら本誌から定期購読してそこから新規開拓してみようと思います。

あれ?軽く雑感だけ書こうと思ったらなんかダラダラとこんな長い文に…長文病だ…

★最後に:きらら系=初見に厳しいという指摘の不確かさ
これは自分の実感からの主張なのですが、自分がきらら系全般を語れるほど多く読んでないという問題、そしてきらら系にも初見に優しいものはあるという問題があります。

第1の問題として。
http://www.oresen.net/mt/2007_12/29/post_1177.php
こちらはおれせん。さんの2007年きらら系4コマのベスト10です。これに、ふおんコネクト!が他とは違いふおんコネクト!が『敷居が高い』とされていて、ここでもしかしたらただ単にふおんだけ敷居が高いだけで他のきらら系はそうでもないのか?という疑問が出てきました。
その点に関しては、自分としては、単行本買ってみたり雑誌で読んだ中で「ファミリー向けに比べ置いてけぼり感が強いなぁ」という印象があるのですが、あくまでも印象です。
第2の問題。
自分が好きなきらら系の作品として、例えば○本の住人なら「小学生の女の子と変な絵本作家の兄の2人家族」という提示が分かりやすく1話からされています*10ドージンワークなら「級友がエロ系同人作家、幼馴染も同人作家の、非同人作家の女の子」と提示されます。どちらも第1話から入ってきやすいです。きらら系にも入りやすいのはあるんです。
自分としては、だからこそ読めて、そうでない大多数のきらら系は読みづらいという印象なんですが…あくまで印象として書いてます。
ふおんコネクト! ざら まんがタイムきらら 芳文社 - クレイジーワールド 〜漫画レビューまとめ〜

*1:芳文社から出ている4コマ雑誌、まんがタイムきららとその姉妹雑誌に掲載されている漫画のグループ。いわゆる萌え系、同人作家が多いなどの特徴があるっぽい。

*2:まんがライフ・くらぶ・タウン・タイム・ホーム…とかそこら辺。植田先生とかいつつ萌え系も最近増えているらしい。参考→スポンサーサイト - よつぎりポテト

*3:重要だから赤字にしました

*4:例えば「冒頭のチビッ子は先生?飛び級?」とか「タイトルからふおんて子が主人公なんだろうけどこの子どんな子なの?」など

*5:絵柄の好き嫌いだけでなく、「スムーズに読めない」と感じるのが気になります。

*6:まんがタイム・ホーム・くらぶライフ・タウンなどの、非きらら系、きららなどが出る以前からの系統である非萌え系漫画。定義は難しいけどとりあえずここではこんな感じ。

*7:恐らく、編集側の意図だと思います。他の作品も「最初の4コマで作品世界の簡単な説明」というパターンは非常に多く見られ、編集者の方の4コマ製作のノウハウだと思います。

*8:自分は、2学年がループした辺りからハマってきました

*9:連載が進むにつれ、各キャラの掘り下げ、関係性の変化などが出てくるので、もちろん最初から読んでいるほうが面白いと思います。あくまで、ふおんに比べてという事。

*10:ちなみに同じ作者の非4コマ漫画の百合星人ナオコさんは2人の関係が分かるのは少し経ってからで第1話は読者置いてきぼり気味