ケバくてセクシー、そして鬱 トクボウ朝倉草平

秀武先生の新作出たよ。

トクボウ朝倉草平 1 (ジャンプコミックスデラックス)

トクボウ朝倉草平 1 (ジャンプコミックスデラックス)

表紙絵で無いみたいなので。

「死にたい」にハートマークあしらえた人は素晴らしい。
スーパージャンプ連載。
「野獣は眠らず」「妖怪人間べム(コミカライズ)」と、魅力的な作品を出しつつ、ヤングジャンプには残念ながら定着し切れなかった高橋秀武先生。スーパージャンプに活動の場を移し、読み切りから連載化したのがこの漫画。

主人公朝倉草平は、警察庁生活安全局特殊防犯課指導係所属の警視。わかりやすく言うと国の警察のお偉いさん。
この世に満ちあふれている「害虫」に「行政指導」を行うという、いわゆる勧善懲悪ものです。

害虫には良心が無い…
あるのはうまい事法をくぐり抜けてきた自信だけだからな……!
そこで害虫に法律を教えてやる

これは捜査ではない
行政手続法によって定められた
行政指導

逮捕状を取るためには裁判所が納得する「証拠」が必要だが
行政手続法により行政指導には礼状はいらない
よって証拠も要らない

特殊防犯課指導係には特別な権限が与えられているため『朝倉さんが気に入らねーと思った』だけで指導が可能
害虫相手に銃乱射するは、日本刀持って大立ち回りするは、「破天荒型ヒーローモノ」とでもいえばいいでしょうか、とにかく痛快です。

話の展開は単純且つ痛快なのですが、朝倉本人は極めてダウナー。そこのギャップが面白い。
見た目は弱そうで、飄々としていて、上司の言うことには逆らえないで。極めつけに口癖が「死にたい」。
仕事が始まる「死にたい」。仕事が終わって「死にたい」。ラーメン屋でボソっと「死にたい」。地方出張辛くて「死にたい」。

D

そんな彼が、「害虫」を追い詰める際には毒々しい本性を出しながら(でもダウナーに)暴れまくる姿が妙に心にひっかかります。
何というか、非常に「セクシー」。
その欝っぽい表情・死んだ目、無造作な髪などが、写実的な絵で濃密に描き込まれています。一見線は細いけど鍛えぬかれた体から体の節々までが存在感があるんですよ。

1巻で最高のセクシーショット。この表情、どうよ!
ちなみにこのシーン、食品偽装疑惑のある会社社長に「行政指導」を行い、強制セルフフ○ラをさせている場面。コイツ、ド変態だな。
証拠もナシに飛び込んで暴行、見事自供を引き出した!え?濡れ衣だったらどうするかって?もっとフィクションの楽しみ方を知ろうぜ!
最期には「次やったらまた来るぞ」的な捨て台詞。徹頭徹尾サディスティック!
やりたい放題の朝倉ですが、強く抱いているのは「世に害を成す輩への怒り」、そして「その被害にあう人々の悲しみ」。毒を持って毒を制すダークヒーローです。
脇を固めるキャラもいいです。朝倉に毎回振り回される不運の巡査・辻もいいけど、なんといっても女上司・叶がいい。ツンデレ女上司っていいよね!第1話から「朝倉に電話で指示を出す上司の存在」は出ていましたが、満を持して登場したシーンがコレ。

どうですか、ケバいでしょ
(恐らく)朝倉に恋する乙女の純情的シーンなんですが、ケバいせいでヤンデレ化してると錯覚しちゃいますよ。病んでないよ。
このバタ臭さがエロくていいんですよ。つーか女上司で語尾が「もん」ですよ。もん。もんとかエロ過ぎ。キタコレ。
で、この女上司・叶は、普段は朝倉をこき使いまくってるんですが、ここまで露骨にツンツンだともうデレへの伏線が完璧じゃないですか。強烈なヒロインだ…あぁ、森さん*1に会えない寂しさが埋まっていく…これは良い。

1巻の構成がまた面白い。長めの尺で1話完結の話が続く中、1巻最期の話は続きものの一番最初の回。単行本派には溜まったもんじゃない構成ですが、1話完結で印象的な話を続けた流れで続き物をどう描くのか、要注目です。

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トクボウ朝倉草平 1巻 - それはロックじゃない

*1:前々作のヒロイン