単行本単位の感想でなく、今までの展開のまとめ的記事。
- 作者: 森高夕次,松島幸太朗
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2007/11/08
- メディア: コミック
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外れるのはカイ、縞青海。
まるでフランスW杯の時のカズ*1の様な鮮烈な世代交代劇にさらされたのが、縞青海です。
■縞青海とはどういう人物なのか。
縞青高校の理事長の息子であり野球部の主将にして捕手。アー坊達の2年先輩にあたる。自他に厳しい努力家で人望も厚い。理事長の夢である甲子園出場のために努力を怠らない。縞青高校3年生学年トップの成績を誇る。
部員達(練習補助員の直木を含め)を家族の様に思っており、アー坊のために両投げ様のグローブを作ったり、直木がアー坊の提案で始めた打撃練習で気付いた事をまとめたメモを渡された時は、積極的に続ける様促す等、厳しくも優しく接している。
付け加えると、チームの4番打者。あらゆる面でチームの柱であり、縞青高校が都大会で2回続けてベスト8という好成績を収めたのも彼の統率力の賜物であるといいます。
■では何故、そんな選手が世代交代の危機に陥っているのか
まず、「野球というポジションはピッチャーが一番重要」ということ。そしてそのために、「ピッチャーを活かすキャッチャーが重要」です。
縞青高校のエース候補として最近部内で頭角を現してきたのが、主人公である小沢アー坊。この度の練習試合でも3失点完投という見事なものでした。しかし、その3失点の内容は海とバッテリーを組んだ1回で3失点(3ランホームランを打たれる)、その直後海と1年生キャッチャーと交代したらその後は見事に抑えるというものでした。少なくとも、「アー坊がエース」の場合「海は正捕手に相応しくない」ということが、誰が見ても分かるように見せ付けるような形になってしまったのでした。
この場面に対して360度の方針転換さんの感想。
もう、監督の采配は一種の見せしめだった気がしてならない。そこまで強烈に世代交代を図らなければ甲子園を目指せないものなのか……
アー坊が平太に投げ込みやすいのはリードの形が両投げの長所を徹底して活かしているのはもちろん、海相手だと気負いが強すぎるせいかもしれない。恩が強すぎて上手く返せないのだとしたら、ずいぶんな皮肉だ。
キャッチャーに関しては、相性の良し悪しという面もあるでしょうが、部内での練習試合を見る限り海のリードはやや単純という印象がありました。もちろん1年生キャッチャーである関口平太の新人離れした実力も大きな要因ですが。
■じゃあ他のポジションに移れば良くね?少なくともバッティングは良いんだから。
今までの伏線から「海の正捕手の座危うし」というの明白だったのですが、それでも海はチームに必要だろうという安堵感がありました。まさかこの人がスタメンを外れることは無かろうかと。それが、今週号で彼が思った以上に崖っぷちに立たされている事が分かったのです。
⇒キャッチャーというポジションの特性上、他のポジションに着くことは難しい。
中学時代からの平太のチームメイト、段田八五郎曰く、
・海の唯一の欠点は、キャッチャー以外の守備が出来ないことらしい。
・実際、内野と外野のノックはお粗末なものだった。
・キャッチャーは『その専門性』から他のポジションに行きづらい。
「前から打撃が来ない」というは、自分の様な野球非経験者には発想しづらい特性ですね。ここを上手く説明して説得力を持たせています。そしてその説得力が、ますます海の崖っぷちっぷりを示していきます…
■簡単なポジションなら今からなら間に合うんじゃね?
守備が簡単なポジションで第一に思い浮かぶのがファースト*2。当然海のファーストへのコンバートも提案されます。しかし…
ファーストには直木がいる。
1年生で、しかも最初は正式な部員でなく練習補助員で入部した直木。主将で4番の海と比べられるような存在ではないはず。それが、今では海を押しのけてでも必要な選手になっていたのです。
1つには直木の才能が最近開花しつつあるということでしょう。縞青高校野球部監督・盤角*3は、早くから直木の才能に気付いていました。彼を試合で使い、そして直木は見事期待に応えます。しかし、それは強豪校の4番打者を控えに回すほどのものなのでしょうか。
盤角はこう言います。
ウチの繁森高校もいいチームになってはいるが…
このままで行くと本番で“あと一歩”というところで甲子園には届かんでしょう
その“あと一歩”を埋めるためには
思い切った起爆剤を使わにゃダメだと思います
起爆剤。
最近の直木の成長ぶりから可能性を感じた盤角の、一種の博打です。
海の父である縞青理事長から野球を学び、海に幼い頃から指導を行っていた盤角。その海を切るというの非情の判断。しかもその判断は、縞青理事長が自ら考え出した「私情を挟まないために指導と采配を切り離す」というシステムが生んだものでした。
一連の動きから、フランスW杯の時の岡野監督を思い出さずにはいられません。彼はW杯予選を勝ち進むために、これまで日本がW杯に行くために尽力してきた三浦カズを外し、若い城彰二を起用したのでした。*4その結果がどうなったかは皆さんがすでに知っての通り。
気になることとして、1年と上級生との今後の関係。縞青高校はいわゆる「体育会系の階級社会」を否定し、実力のあるものが上に立つことをよしとする社会。しかしそれでも、最近の1年生たちの急激な台頭に不穏な空気が流れるのも仕方ありません。そして、今までチームを支えてきた男が「一年のせいで」控えに回されるという状況。海はもちろんのこと、他の上級生たちはこの事態をどう受け止めるのでしょうか。「おれはキャプテン くたばれ甲子園の章」にて、体育会系社会を強烈に皮肉ったコージィ城倉=森高夕次先生がこの漫画でも原作を勤めているだけに、今後部内でのドロドロした場面が描かれる可能性は高いと思います。
海の今後は一体どうなってしまうのか?彼の行く末の前に、とりあえず来週は海の妹で重度のブラコン+ヤンデレ娘・空の毒牙が直木に迫る!*5来週も見よう!少年チャンピオン。
つーかね、もっとチャンピオンみんな見るべき。弱虫ペダルにダイモンズにエンジェルボイスにギャンブルフィッシュにサナギさんにみつどもえにイカ娘に…マジで今の連載陣は黄金期と言えると思います。こういうことネットで言ってもあまり意味無いんですよ。ネットでは充分に評価されているので。大事なのはネットの評判の高さを知らない大多数の人にこの面白さを伝えることだと思います。ただそれは言うに易くであり、意味が少ないだろうと自分に出来るのは「チャンピオン面白えー」とここで叫ぶことだけなのです。作品単品の評価はアンケート葉書を出すことで大きな意味があるだろうけど、雑誌の評価を高めるにはどうすればいいのでしょうか。