八神健先生ご乱心 どきどき魔女神判! 1巻

どきどき魔女神判!(1) (チャンピオンREDコミックス)

どきどき魔女神判!(1) (チャンピオンREDコミックス)

チャンピオンRED連載。
長いキャリアを持つ漫画家が、そのキャリアの中で突然怪作を生むことがまれにあります。少女漫画、ファミリー向け4コマから10代男子向けの軽くエッチな漫画まで描いてきた私屋カヲル先生が、「強烈なまでのあざといロリエロ」と「案外暗くて重いストーリー」を混ぜ込んだこどもの時間を生み出したり。その作者の作品群の中では異端なのですが、それを生み出したのは紛れも無く今までの経験のなせる業です。
ジャンプでデビューし、移籍・アニメ化・エロなど様々な経験を積み重ねた実力派、八神健先生。その八神先生がチャンピオンREDどきどき魔女神判のコミカライズを手がけると聞いた時は思わず遠い目をしてしまったのは懐かしい思い出です。
魔女神判といえば、製品発表時からそのあまりにもアホなコンセプトで日本中のごく一部に戸惑いと興奮と爆笑をもたらしたゲーム(参考:http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/804111.html)。未プレイなんですが、イメージとしてストーリとかよりもネタ要素が強くて漫画にするのはどうなのよ?と思ったり。チャンピオンREDはグロエロ吹き荒れる最狂の漫画雑誌。濃いなんて言葉で足りない濃い連載陣の中で、アニマルで良い漫画を描いていながら周りのインパクトに押されてパッとしなかった前作のこともあって八神先生はここで大丈夫なのかと思ったり。
要するに、不安だらけだったんです。でもそれは連載開始と共に吹き飛びました。
「これ、八神先生?」
今までの八神先生の、丁寧にストーリーをつむいでいくというイメージを根底から覆すハジけた展開。
原作や作者の性癖力量からいって、「エロ方面」でハジけるのは想定どおり。いや、期待していたよりずっとハジけてますが、それよりなにより驚いたのがパロディでのハジケっぷりです。
八神先生ってパロディのイメージが無かったのですが、今作のパロディは他のパロディ専門のギャグ漫画家のそれに比べてもかなり高水準。叫び声あげれば「URYイイイイイィィ!!」だったり「ぬふぅ」だったり、道具を出すときゃ胸の四次元なポケットからで、ネギを振って科学の限界を超えたり。分かる人にはたまらないネタをそこらかしこに詰め込んでます。
股間にこけしって時点でギャグにはなってるんですが、そのこけし伝染るんです。だったりドラゴンボールだったり。ネタが取り込める余地があればとにかく取り込む姿勢が密度を濃くしています。
パロディ漫画にありがちなのが、パロディありきの展開でストーリ展開が拙くなること。そこら辺さすがですよ。ストーリー性無いに等しいストーリーを毎回上手く料理して次回へキッチリ繋いでます。あぁ、やはり漫画の上手い人だ。逆にこういう上手い人ってなかなか従来の枠から踏み出せなかったりするんですが、何なんでしょうか今回は。ベテラン作家+赤い核実験場バカゲーの奇跡の化学反応としか言いようがありません。
「ラフカディオハーン」→「裸婦画でアハーン」はさすがに無理があると思いましたが、これぐらいの無理気にしないでガンガン突き進んでるのがいいですね。ラストまでこのままおバカ全開で行ってほしいです。