SBHにようこそ! ストライプブルー1・2巻

ストライプブルー 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ストライプブルー 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ストライプブルー 2 (少年チャンピオン・コミックス)

ストライプブルー 2 (少年チャンピオン・コミックス)

週刊少年チャンピオン連載。
作者コンビの前作ショー☆バンの続編です。主人公ショーバンの弟アー坊(小沢亜穂)。類まれな野球センスを持つ兄の背中を見て、彼も野球の道に進みます。そんな彼が今作の主人公です。
ショー☆バンは、「野球の技術の描写にこだわった作風で、野球漫画によくある恋愛要素などはほとんど存在しない」*1漫画だったのに対し、この物語は恋愛方面にかなり力を入れています。今のところそっちがメイン。
ヒロインの1人、江口花(花ちゃん)はアー坊の幼馴染。女の子離れした運動神経で、なんと中学校の野球部のエースとして活躍。ルックスの良さもあり、野球少女としてマスコミに取り上げられるなどちょっとしたアイドル的人気を誇っています。のりっぺも幼馴染。家は隣どおしでベランダからお互い話が出来る距離にあります。なんてラブコメの基礎をついてくるのでしょうか。
2人ともアー坊に想いを寄せているんですが、そこにエキセントリックな印象があります。アー坊を独占しようと作者もびっくりの黒い策略を見せたのりっぺ。花ちゃんにしたってあのアー坊へのベタ惚れっぷりは異常。
ヒロインに限らず、過激なキャラが多いです。「部室内でラブコメ禁止じゃあ〜」の名言で読者の印象に残った直木庄次。バッテリーを組んでいた男の移り気に嫉妬を燃やす雲竜*2体型の男、段田八五郎。その他野球部のキャプテンからライバル校の監督、まだ物語は始まったばかりなのにあまりに濃い面々。物語が本格的に動いた時、一体どうなってしまうのでしょうか。
濃い面々の中で、ひたすら「良い子」な印象のある主人公アー坊。明らかな好意を見せる幼馴染にも朴念仁な反応。しかし、ショー☆バンからの読者は知っています。始めは可愛いショタっ子だったショーバンが、時を経るにつれ持ち前の過激さを膨張させ最終的にはコントロール不能の怪物に育ってしまったことを。アー坊にも兄譲りの凶暴性の片鱗はすでに見られ、それを高校野球という一種の閉鎖空間の中でどのように育てられるのかが恐ろしくてなりません。予想として、高2くらいになれば誠(スクイズの)みたいな状況になるんじゃないかと。(のりっぺ妊娠するも花ちゃんといちゃついてる感じで)
しかし、一番強烈な印象を残したのは「もう1人のヒロイン」縞青空。高校進学で悩んでいたアー坊は、彼女を巻き込んだ「ある事件」をきっかけに彼女のいる縞青高校への進学を決意するのでした。父は縞青高校の理事長兼野球部部長(責任者の事ね)。兄は野球部のキャプテン、縞青海。この2人を見て育った彼女は、2人に対して複雑な感情を持つようになります。事故に空に負い目を感じているアー坊を利用し、空はアー坊にあることを命じます。
この命令がエグい。言う事もエグければ、態度も表情もエグい。負い目のある下級生を自分の手足のように扱う暴君がここに誕生したのです。こういうドロドロした内面を書くのが原作の森高先生(コージィ城倉先生の原作名義)の得意技。今作でもそれが存分に見られそう。連載を追いかけている者は「デレ化」という更なる衝撃を目撃しているのですが、それは先のお話。
彼女に限らず、作画の松島先生は表情が上手い。とまどい、不安、怒りなど、作中に渦巻いている負の感情を存分に表現しています。元々の絵柄は爽やかさや可愛らしさが活きる絵柄なので、そこからのギャップが強い印象を与えます。
しかし、自分の学校に自分の名前付けちゃうなんて縞青パパ(下の名前不明)は良い性格してますよ。娘に「エグい私立学校の理事長」と言われるだけあります。エグ親子。
女の子に負けず劣らず野球部員も濃い面子が揃ってます。「バッター対ピッチャー」、つまり「個対個」が強調される野球漫画において、キャラが立っていることは試合の魅力にも繋がります。ライバルの立場で強い個性を持つキャラが今後現れてくれたら、野球漫画としても期待できます。その点は前作の実績があるから磐石でしょう。
カバーを外すと次の巻のダイジェスト。単行本での描き下ろしなどの特典があまりないチャンピオンコミックですが、これは既存の原稿を上手く活かした名案だと思います。表紙も元の絵を切り貼りしてスタイリッシュな印象。欲を言えば新しく描いてほしいけど、週刊連載にそこまでわがまま言えません。漫画家の手を煩わせず良い物を作る、このアイデア秋田書店グッジョブ。(たまには秋田書店を褒めてみる)

ベタも重なりゃ超展開 琴子の道1巻同じ原作者の違う漫画。こっちもオススメ。

*1:ショー☆バン - Wikipediaより

*2:ドカベンのキャラ雲竜大五郎。神奈川県予選の強敵。ドカベンよりデブ。雲竜大五郎 - Wikipedia