惑星のさみだれ4巻(とサイコスタッフ) 超能力よりも大切なもの

惑星のさみだれ 4 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 4 (ヤングキングコミックス)

サイコスタッフ (まんがタイムKRコミックス)

サイコスタッフ (まんがタイムKRコミックス)

黒猫の騎士、風巻豹の願いは「アカシックコードの掌握」。つまり、宇宙の全てを知ること。それは、敵である魔法使い・アニムスの望みと同じでした。アニムスの仲間にならないかという誘いを風巻は断るわけですが、ここで敵の目標、しいては物語の最終的な焦点が「全知」であることを印象付けるのでした。
が、次の回には、全知全能となった者があっさりと出てくるのでした。
男の名は秋谷稲近。カジキマグロの騎士であり、鶏と亀の騎士の師匠。
若くして突然「全知者」になり、500年近く生きてきた男。彼が500年の生涯を通して知ったことは、「全知などくだらない」ということでした。
彼は弟子を守って戦死するのですが、その秋谷の言葉の1つ1つには彼の人生の重みが感じられるものでした。

500年生きた…
何でも知ってたし何でも出来た…
でも…喜びも悲しみも強さも弱さも持っていた…
…普通の…人間だった…
お前たちも…同じだ…
どれだけの超能力を持とうと…人間だ…

この作者は、普段変化球ばかり投げてくるくせに、「キャラの死」というものには全力で投げ込んできます。このキャラの死にはどういう意味があるのかというのを描いています。2巻のとき同様、今回もそれでズバーンとやられました。
アカシックレコードという途方も無く大きな力を題材として出しながら、「普通」であることの尊さを伝える。ここに作者のメッセージを感じます。
同じ時期に発売されたサイコスタッフにもそれが見てとれます。主人公は強大な超能力を持っているんですが、それよりも地道な努力が大事だと考えています。そういう考えを持った背景に、母の教えがありました。大きな力を持っていても、時にそれは無力なことからも学びました。さみだれとの違いは、裏返しに与えられた能力の大切さも描いていること。まぁこっちはそういう要素よりも素晴らしいラブコメっぷりにニヤニヤ止まらない漫画なのですが。
巻末では師匠がここでも味のあることを言っています。作者は「現実見ろ」って言いたいんじゃないでしょうか。突き放した意味でなく、「現実は素晴らしい」という意味で。