第三回レビュー募集「かってに改蔵」 - 業魔殿書庫・オタク漫画紹介録に参加します。まずは採点から。
面:5 オタ:3 パロ:5 共:4 痛:3 萌:2 燃:1
・面白さ … 5・その時代を象徴する作品。
・オタク度 … 3・そこが作品の本質ではないとは思う。
・パロディ … 5・パロディ芸の頂点。
・痛さ … 3・オタクの痛さを描くという点では普通。
・萌え … 2・萌え漫画を描きたくて失敗してるっぽい所がまたギャグになっている
・燃え … 1・むしろ久米田先生の冷静な視点が魅力。
かってに改蔵のネタの1つに、「97 カワイ台風」というものがあります。僕は、この小ネタに改蔵以降の久米田先生のギャグの特長が集約されていると思います。
その回は、「当事者は盛り上がっているのだけど周りは盛り下がっている」場面を茶化した話でした。「97 カワイ台風」というのは、現在中日ドラゴンズ1軍内野守備走塁コーチの川相昌弘氏が、巨人での現役時代の有名なエピソードをネタにしたものです。
子供たちが観戦する試合で決勝タイムリーを放った川相選手。ヒーローインタビューの際、当時の巨人ファンの間で話題になった、子供たちの名前を読んで「パパ頑張ったよー」発言が出ます。
川相昌弘 「パパ頑張ったよー」 ‐ ニコニコ動画:GINZA←その時の映像*2
その名場面を、久米田先生は「97 カワイ台風という言葉」「パパ頑張ったよーと叫ぶ選手」「ションボリしている群集」という、これだけの要素で見事に茶化しているのです。
僕は川相選手が好きなので、当時のヒーローインタビューは感動と共に深く印象に残ってました。それを「川相が空気読めなかった」様なネタにされたのを見たときは「名場面が 名場面が!!」と仰け反り涙を流したものです。久米田の野郎!
実際川相選手がどうだったかは見て判断してもらいたいですが、重要なのは川相選手のインタビューをネタにしたこと自体。多分そのエピソードを知らない人には何が面白いのか全然分からない、それどころか意味すら分からないと思いますが、久米田先生のパロディの良さはこの分かる人にだけ分かればいいという開き直りにあると思うのです。分かっている人は「何でこんなマニアックなとこ突いてくんだよw」となります*3。そしてそれは、なんだかんだでネタを知っていることを前提で描かれているヌルいオタク系パロディにはない攻撃的な姿勢です。
ぼく地球ネタは何割が理解できたのでしょうか。元ネタが山倉選手(元巨人)って誰が気付くでしょうか。サラダの作者の内輪ネタなんて関係者しか知らねーよ。氏神一番って誰やねん。
こうしたネタは、ヤマカムRさんのいう通り、「ネタは狭ければ狭いほど面白い」*4という先生のギャグに関するこだわりがうかがえます。
そういうニッチなギャグを出す一方、「あるあるネタ」のクオリティの高さにも目を見張るものがあります。特に15巻の「帰りの会」。子供たちだけで話し合ってクラスの問題を解決するという建前に隠された、クラスの地位の高い者の意見が物を言うあの異常な空気をあそこまで表現できるものかと。途中にはさまれた先生の目線がまたそれっぽさを増してます。
ニッチをはさみつつ、こういう(オタクとしてでなく、広い層に受け入れららる)共感もカバーしているのが、かってに改蔵が広く受け入れられた理由だと思います。
あと、よく「改蔵は不人気だった」という声を聞きますが、競争の激しい週刊少年誌で26巻も続いた漫画が不人気な訳ないじゃないかと思います。もっと評価されるべきとは思いますが。
レビュー内容が被ってるのは同じ漫画だからしょうがないと大目に見てください。あと読み返してみて「これ読んでいること前提の文だから知らない人への紹介にはならないよね」って気もしますがしかたがないです。
川相昌弘 - Wikipedia
川相選手といえば、「犠打世界記録のかやいさん」を忘れることは出来ません。