オーレ!3巻 よそ者の仕事

オーレ! 03 (BUNCH COMICS)

オーレ! 03 (BUNCH COMICS)

コミックバンチ連載。
3巻は主に上総オーレ対横浜キングスの試合が描かれています。2部リーグからの降格の危機に瀕している弱小サッカーチーム、「上総オーレ」。この試合を落とせば降格が決定という状況で、前半戦は1−0のビハインド。もう後がない場面でのハーフタイム、選手達は緊張でガチガチになり監督ですらろくに指示を出せない始末。1人冷静なドイツ人DFレネ・ヴォルガングは、通訳の中島にこのように語ります。

オレたちはどこか「他人事」
連中ほど上総オーレの「ファミリー」になっていないってことだ

クラブに来て5ヶ月足らず…確かにオレたちはまだ「よそ者」だ
…だがよそ者にはよそ者の― 「第三者」にしか出来ない仕事があるハズだ

レネはこの言葉の通り、後半の反撃の口火を作ります。この物語の主人公はレネの通訳の中島順治。市役所から上総オーレに出向しました。始めは弱小サッカーチームの状況に戸惑うも、次第に通訳を越えたチームになくてはならない働きをするようになり、今日の試合も集客のために奮闘していました。集客の目標を達することが出来ず自分の力に疑問を持った時、レネの姿を見て中島も自分に何が出来るか考えます。
弱小サッカーチームをスタッフの目線でどう変えることが出来るかという視点の物語。中島の行動が上総オーレを少しずつ動かしていくのですが、それだけでは上手く行かないシビアな展開。中島は常にサッカークラブの経営の厳しさという壁にぶつかります。
そこら辺のヤキモキが面白さなのですが、3巻はサッカーの試合それ自体も熱くて良かったです。チーム経営が主な話の筋なので今までの試合は軽く描かれてきましたが、シーズン終盤ということもあり濃い試合展開を見せてくれました。
対戦相手が2部の強豪チームというのも面白い要因の1つ。チームの置かれた状況の差が試合に影響を与えます。2位のチームが負ければこの試合に負けても1部昇格が決まる横浜キングス。一方上総オーレは1つ上の順位のチームが勝てばこの試合勝っても降格が決まってしまいます。他のチームの試合経過の情報を巡って選手の士気も二転三転、士気を左右すべくベンチでの情報戦も白熱、ゲームの熱気を更にあおります。
雑誌連載ではリーグ戦の結果が出て、上総オーレの1年は終わりました。問題点ばかり浮き彫りになった上総オーレ。次の1年は飛躍の年になるでしょうか。上総オーレの飛躍が見たい。次のシーズンが見てみたい。
このシーズンで終わることがない事を祈ります。1部リーグ昇格を果たし1シーズンで連載を終えた「オレンジ」とは違い、彼らはまだ何も成し遂げていないから。苦難の1年の後の飛躍の1年という、ストッパー毒島のような展開を僕は見たいです。