少年漫画の魅力 能田達規

nadegata2006-09-25

能田達規先生が最近コミックバンチで連載を始めた「オーレ!」に注目、期待しています。
弱小プロサッカーチームの通訳として出向した公務員が主人公のサッカー漫画で、サッカーを通して選手、チームスタッフ、サポーター、スポンサーなど思惑、人間関係を多角的に描いているのは代表作のORANGEを思い出します。まだ始まって間もないのですが、今後の展開を楽しみにしています。
「満腹ボクサー徳川」と「ガウガウわー太」がバンチからなくなってから、バンチはあまり読まなくなりました。どのコンビニにも置いているわりにはイマイチ存在感が薄いバンチですが、旧ジャンプ連載陣の他にも古屋兎丸先生が連載しているなど結構注目すべき雑誌なのかもです。
能田先生は、長い間チャンピオンで連載していたのですが、フットブルースを最後にシリウスやバンチで連載するようになりました。もうチャンピオンに戻ることはないのでしょうか。
能田先生の漫画は少年漫画の王道的な印象があり、一風変わった作品の多いチャンピオンとはズレができたのかもしれません。なにせ椿ナイトクラブが連載している雑誌ですから。
能田先生の代表作ORANGEは、僕が大好きな漫画のひとつです。サッカーはあまり好きではないのですが、この漫画はサッカー漫画の中で一番面白いと思った漫画です。
(と言ってもシュートも俺たちのフィールドも読んだことがないのですが)

舞台は愛媛。2部リーグに所属する弱小サッカークラブが1部リーグ昇格を目指す物語です。
絵柄は可愛らしい感じで、スポーツ物にすれば迫力が足りない印象があります。しかし、それを補って余りあるほど、展開が熱いのです。シーズンが進むごとに昇格争いが厳しくなり、1点の重み、人々の重いがのしかかります。終盤の試合内容は神がかりといっていいほどすさまじく、2回目のさいたまレオーネ戦は鳥肌立ちっぱなしでした。
サッカーの試合はもちろんのこと、オーレ!の様にチームの背景を描いているのが特徴のひとつです。経営する会社、サポータ、スポンサー、地元の自治体、代表選出など、様々な問題が出てきます。自身も大のサッカー通である能田先生だからこそ描けるのでしょう。
クラブのオーナーは弱冠17歳の盆野美果。(愛称はミカン)彼女の成長と主人公ムサシとのブコメっぷりも魅力のひとつです。
この漫画で僕が一番押したいのは、田村秀夫
戦力補強の波に流されてあえなくレギュラーの座を奪われたオレンジの元・正ゴールキーパーです。
長年オレンジのゴールマウスを守ってきて、チームメイトからの信頼も厚いのに、突然新しく来たゴールキーパーにポジションを奪われます。
同じようにポジションを奪われた古株のメンバーは監督に対して不満が吹き出ます。そんな中で田村さんは、こう言ってメンバーをいさめます。
いいかげんにしろっ!!
おまえらなに考えてんだ!?
いまはそれどころじゃないだろう!!
オレンジは来年なくなるかどうかの瀬戸際なんだぞ!!

オレ達を使わないことで勝てるようになるんだったらそれでいいじゃねぇか!
オレ達が長年愛したオレンジが それでなくならずにすむんだったら・・・
それでいいじゃねぇか!!  
田村さん自身、監督の采配に不満は持ちつつも、チームのために仲間をいさめ、カップ戦で結果を出せば監督は使ってくれると説得します。どこぞのチームのエースピッチャーの金ナントカとは大違いです。
カップ戦では結果を出しても、新しい正ゴールキーパー三島はチームの柱になるほどの成長を見せ、田村さんは試合に出れない日々が続きます。
時間は流れシーズン終盤、これに負けたら昇格は無理になる首位さいたまレオーネ戦、三島はペナルティーエリア内で手を使い、一発退場になります。田村さんの出番です。
サポーターの声 
誰だアレ?
三島じゃなくて大丈夫なのかー?

バカヤロウ!田村さんは三島が来る前ずっと正GKだったんだぞ!
去年まで「オレンジの守護神」って言ったら田村秀夫に決まってたんだよ!!

後半残り10分で1点ビハインド、不安を隠せないメンバーに指示を出す田村さん。
これが決まったらもう後がないFKの場面

三島はあの時わざと手を使って止めた
あの場面失点するよりも自分が退場する方を選んだ・・・
三島は自分の代わりにオレがゴールを守るのを信じて退場していったんだ・・・
オレは その期待に応える!!

見事にFKを止め、こぼれ球をキャッチし、高々と手を上げる田村さん。
止めたーーーーー
オレンジの守護神 田村 ここにありーーーーーッ!!

この場面は本当にヤバかったです。田村さんがかっこ良すぎました。
田村さんを信じた三島、期待に応えた田村さん、そしてこの試合は、かつて不満を漏らした男の活躍で締められます。オレンジというチームの成長が感じられます。
個人の魅力を十分に表現したスポーツ漫画はたくさんありますが、ここまで「チーム」を描ききった漫画があったでしょうか?あったとしても、どこか都合よい展開になってしまいがちですが、ORANGEはひとつのチームの成熟を一年を通して描いたという所に他の漫画にない凄さがあります。個人個人の負の面や弱さを描き、それを他のメンバーが補っていました。
そしてシーズンの最終戦では、チームメイトへの信頼が試合の鍵になります。
ここまで紹介した田村さん、実はかなり脇役です。他にもたくさんの魅力的なキャラクターが出てくるORANGE、ぜひ全巻を通して読んでみてください。

バンチでの連載は大人の読者層を意識した内容で、新しい能田作品を見れるのですが、この人の漫画は子供に読んで欲しいです。これぞ少年漫画という王道を描ける人ですから。
フットブルースはサッカー版MAJORの様な大作になることを期待していただけに、打ち切りはショックでした。サンデーとかよく合うと思うのですが。シリウスをどこまで小学生が読んでいるのでしょうか。

あと能田先生は自身のブログにもっと仕事情報を載せたほうがいいと思うのですが、こんなずさんなブログを作っている僕が言えた立場じゃありません。