BJの核弾頭 鬼堂竜太郎・その生き様をふりかえる

ビジネスジャンプの傷だらけの仁清が面白いです。仁清とか署長とか、男くさくていい奴なんですよね。猿渡先生の漫画にハマるのは初めてです。
しかしONEOUTSと鬼堂龍太郎が同時に終わったのが痛いですね。読む漫画が少なくなってしまいました。他にもホスト一番星や怨み屋本舗などあるのですが。
鬼堂龍太郎・その生き様は、シモネタと手塚、本宮、永井パロなどで知られる田中圭一の漫画ですが、そのあまりのシモネタばかりの展開に、もしかしたらBJ読んでくだらないと思って続きを読まなかった人もいるかもしれません。そういう人はもったいない、鬼堂龍太郎は単行本で読んでこそ面白いのです。
これ以降は、もしかしたらネタかもしれませんが、すべて単行本に収録された内容です。
実は鬼堂龍太郎は、元々別の人が企画した真面目なビジネス漫画だったのです。
古賀たけひこ氏という元サラリーマンが、自身のリストラ経験を元に同じ境遇にあるサラリーマンに熱いエールを送る作品としてBJ編集部に持ち込み、連載に向けて動きましたが、古賀氏の家庭の事情により企画が頓挫しました。そこで古賀氏が
著作権など要らない、誰か俺のあとを継いでくれ
という熱い想いを託しました。その企画書を偶然目に留めたのが田中圭一。ぜひ私に書かせて欲しいと言い出します。田中先生にはギャグを書いて欲しいと編集部は言いますが、熱意に押されて、「鬼堂」の田中圭一による連載が決まります。このとき田中先生は、自分の企画を放り投げてまで「鬼堂」の連載に踏み切りました。
これだけ聞いていれば、すでに漫画家と編集の熱いドラマなのですが・・・
田中先生は、連載前で早くも暴走します。鬼堂の見方であり重要人物の春川専務を登場人物に女が少ないという理由で女にします。まぁそこらへんはドラマの医龍でもあったことです。その名もギャル川専務
ネーミングなんて飾りです。偉い人には・・・という田中先生の意気込みが伝わってきます。
このギャル川専務、絵柄は手塚先生シモ連発。感動したら排卵H綱引きハメハメ川くだりなど、普段の田中圭一漫画となんら変わらない活躍をしますが、それはこの漫画がすでに熱いビジネスマンガではないことを意味してました。
単行本では、話と話の間に担当と田中先生の会話とアンケート数の推移が書かれているのですが、第2話でいきなり−17、その後も順調にアンケート数を減らし、田中先生はテコ入れのためギャル川を脱がしたり子供人気を狙って被りものキャラを出したりして人気を回復させます。そもそもビージャンを子供が読んでいるのかが気になりますが。
どんどん暴走していく田中圭一と、担当のやりとりが話の内容とリンクしておかしいのです。担当さんの「もうダメだ・・・。止められない・・・。」が印象的です。
その後もシモ一辺倒で突き進む中、編集部宛に古賀氏から手紙が届きます。古賀氏は今ツバル共和国にいるらしく、BJを読むのが不可能なようです。だから鬼堂がここまで暴走してしまったのでしょう。その手紙の一文の、「本来なら私が原作原稿を書くべきでしょう」に思わず涙。原作を古賀氏が書いていればこんなことにはならなかったでしょう・・・
手紙の中の「ニートを題材にした若年層の労働意欲の喚起」の一文を参考に、鬼堂の息子のニート3兄弟を出しますが、アンケート急降下。ついには担当が手紙の言うとおり展開したら大失敗とか言い出し、その後の古賀氏の手紙と逆の展開にするという暴挙。この頃から担当もおかしくなっていきます。原作者の地位が低いって本当なんですね
3巻はまさに暴走の塊といって間違いないです。ライバル岩城と入れ替わる鬼堂。鬼堂投獄、鬼堂ケツの穴1つで成り上がり、鬼堂AV出演オメガ7人衆まんぴょとまんぴょがこんにちわなど、古賀氏が見たら卒倒するような内容です。この頃には担当も慣れたのか、田中先生と一緒におかしくなってしまったのか2人で一緒にノリノリで打ち合わせをしているのでした。実際話のぶっ飛びっぷりは、3巻は群を抜いてました。
恐らく最終巻になる4巻では、帰国し、変わり果てた鬼堂を見た古賀氏と田中圭一との対決を期待しています。あまりにも出来すぎた話に、疑い深い僕は「ヤラセじゃねーの」と思ってしまいますが、面白けりゃいいんです
面白けりゃいい。
手塚先生のあとを継ぐと思っていた田中圭一先生でしたが、彼の精神は「面白けりゃ原作なんて無視だ」と原作クラッシャーと名高い宮崎駿黄金の精神をも受け継いでいたのですね。ジブリ次回作の監督はぜひ田中先生で。素人でもなんとかなるって息子さんが体を張って証明してくれたのですから。
実際なんとかなったかは知りません。
手塚好きなら、ギャル川の表情だけでも笑ってしまう「鬼堂龍太郎・その生き様」
ぜひ単行本でお読みください。

鬼堂龍太郎・その生き様 1 (ヤングジャンプコミックス BJ)

鬼堂龍太郎・その生き様 1 (ヤングジャンプコミックス BJ)

鬼堂龍太郎・その生き様 2 (ヤングジャンプコミックス BJ)

鬼堂龍太郎・その生き様 2 (ヤングジャンプコミックス BJ)

鬼堂龍太郎・その生き様 3 (ヤングジャンプコミックス BJ)

鬼堂龍太郎・その生き様 3 (ヤングジャンプコミックス BJ)

田中圭一先生の次回作、はぁとふる売国奴に期待しています。